研究実績の概要 |
本研究では、ミカンハダニにおいて、カンキツ寄生時に特異的に発現する遺伝子中から発見したピコルナ様ウイルス(一本鎖RNAウイルス)について、全RNA配列の決定を行う。さらに、寄主植物特異的なウイルスの増殖と太陽光紫外線の影響を調べる。それらにより、植物成分や紫外線によるピコルナ様ウイルスの抑制の有無とミカンハダニへの負荷の変化を明らかにする。このため、昨年度よりピコルナ様ウイルスの全RNA塩基配列の決定に向け、主にウイルスの5'末端側の解読(5’-RACE)に取り組んできた。一方、過去に調査した3’末端側の塩基配列は、全く異なるミカンハダニ系統から分離されたウイルスに関するものであった。このため、本年度は5'RACEに加えて、3'RACEならびに3'側から5'側へ6,703bpの長鎖PCR増幅を行いDNA配列の再解析を実施した。これらにより、最終的に8,977塩基の配列を決定した。この配列についてORF解析を行ったところ、Hubei picorna-like virus 79 (KX884275.1; 9,186塩基) の主要な2つのORFであるhypothetical protein 1(APG78419.1; 2,054残基)およびhypothetical protein 2(APG78420.1; 845残基)との相同性がそれぞれ98%および97%と極めて高かった。しかし、KX884275.1とのDNA配列の比較では、5’末端側にさらに209塩基程度の未読領域が予想される。このため、今後も5’末端の分析を継続して、完全長を解読する予定である。一方、予想配列の主要部分(98%)が決定できたことから、本ウイルスに特異的なqPCR用プライマーを作成した。現在、ウイルス検出感度を検討しながら、寄主植物および紫外線環境の変化とウイルスとの関係の分析準備をしている。
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