ミカンハダニにおいて、カンキツ寄生時に特異的に発現する遺伝子中から発見したピコルナ様ウイルス(一本鎖RNAウイルス)の塩基配列を決定し、寄主植物特異的なウイルスの増殖と太陽光紫外線の影響とそれによるミカンハダニへの負荷の変化を明らかにする。 前年度までに、対象のウイルスがHubei picorna-like virus 79相同性が高いことが分かった。本年度は、2つのORF(protein 1および2)のqPCRに適したプライマーを選出した。その後、ミカンハダニをカンキツとナシで2世代飼育してウイルス量を比較した。その結果、protein 1と2のカンキツ食での発現量は1世代目でナシ食の14.7と3.3倍、2世代目で8.3と3.7倍に増加した。次に、カンキツ食のミカンハダニを紫外線(UVA+UVB)に暴露して飼育すると、ウイルス量は暴露していないハダニ(対照)の1/1000以下に減少した。UVAのみを照射した場合には減少は見られないことから、ウイルスの減少はUVBによることが示された。これらから、ピコルナ様ウイルスの増殖にカンキツ成分が関与し、一方で太陽光UV-Bが抑制効果を持つことが示唆された。カンキツ食では、ナシおよびインゲンマメ食に比べてミカンハダニの生存率が低く、それに伴って総産卵数も半減した。しかし、生存個体の産卵数の減少は顕著ではなかった。また、カンキツ食で紫外線を照射した場合の産卵数への影響は認められなかった。以上から、本実験の範囲ではピコルナ様ウイルスとミカンハダニの関係は共生的と考えられた。 共生的ウイルスが寄主の食性に影響することが分かれば食性分化の新たなメカニズムが提案できる。また、太陽光紫外線がその増殖の抑制を通じて宿主の繁殖を助ける場合、紫外線の新たな生態的役割を提示できる。したがって、今後さらに条件を広げて詳細を検討することが望まれる。
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