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2020 年度 実施状況報告書

小型野生ネコの保全を目的とする非侵襲的なドナー細胞の採取とクローン胚作製への応用

研究課題

研究課題/領域番号 19K22311
研究機関九州大学

研究代表者

宗 知紀  九州大学, 農学研究院, 助教 (90221340)

研究分担者 山内 伸彦  九州大学, 農学研究院, 准教授 (00363325)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワードネコ / 体細胞クローン / ドナー細胞 / 糞 / 卵母細胞 / 卵母細胞
研究実績の概要

本研究は小型野生ネコ保全の手段としての体細胞クローン作製技術を開発するため、その基礎的情報を収集することを目的としている。体細胞クローン作製にはドナーとなる体細胞とレシピエントとなる成熟卵母細胞が必要となる。しかし小型野生ネコから体細胞を採取するためには非侵襲的であることが絶対的な条件である。そこで本研究では、近縁種であるイエネコをモデルとし、動物病院などで避妊手術を行うときに得られる糞と雌猫の廃棄卵巣から、ドナー細胞とレシピエント細胞を得ることを検討した。
ドナー細胞採取:糞表面をPBS/PVAで洗い流し、得られた溶液を遠心分離すると、沈殿物に生きた細胞が存在していることを確認した。また、得られた糞の凍結切片を作成してヘマトキシリン・エオシン染色をすると糞表面に細胞が存在した。さらに糞より抽出したDNAからネコ特異的な配列が存在することがPCRによって確認された。
レシピエント卵母細胞採取:避妊手術で得られた卵巣を4℃または35℃で保存し、研究室まで輸送した。結果的に保存温度は4℃の条件の方が卵母細胞の成熟率がよかった。細切法により卵巣から卵丘卵子複合体を採取し、成熟培地(TCM199+10IU/ml hCG, 0.1IU hMG, 1μl/ml E2)中で24時間培養(38℃, 5%CO2)した。成熟率は5カ月齢以上の個体より得られた卵母細胞が、それより若い個体から得られた卵母細胞より高く、細胞質の色が黒くかつサイズも大きかった。正常に成熟した培養後卵丘細胞を除去し、第二減数分裂中期(MⅡ期)まで到達した卵母細胞に単為発生処理を行った。単為発生処理(卵子活性化)はストロンチウム処理より電気刺激の方が効率的であった。また、卵母細胞の卵核胞崩壊(GVBD)を阻害する効果があると報告されたIBMXを培地に添加して、ネコ卵母細胞を培養したが、その後の成熟率に影響はなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

019年度から本研究を開始し、小型野生ネコのモデルとしてイエネコを用い、動物病院で避妊手術の際に得られる糞と廃棄される卵巣を利用して、ドナー細胞とレシピエント卵母細胞が得られる可能性が示された。糞表面に腸粘膜から剥がれ落ちたと思われる生きた体細胞が付着していることが明らかになった。また卵巣から卵丘卵子複合体がたくさん得られるが、幼若な個体と成体では卵母細胞の細胞質が異なっていることが明らかとなり、レシピエント卵母細胞を選抜する指標が示された。その結果、卵母細胞の成熟率が向上した。またコロナ禍の影響で、動物病院から得られる廃棄卵巣が前年より減少し、除核のためのマニピュレーター操作まで卵母細胞を供給することが困難であったが、現在は回復し、技術が向上しつつある。

今後の研究の推進方策

ドナー細胞:糞からの細胞採取をより効率的にするため、糞全体を緩衝液に浸し、撹拌して濃度勾配遠心により夾雑物を分離する。これにより体細胞の単離方法の改善を検討する。また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC阻害剤)を添加した培地でドナー細胞を培養し、転写活性に対する効果を検討する。
レシピエント卵母細胞:卵巣から成熟率の高い黒色卵母細胞を選択して、MII期に除核することが効果的なので、除核のためのマニピュレーター操作技術向上と、除核を容易にするためのデメコロシン処理を検討する。

次年度使用額が生じた理由

購入しようとした消耗品費に不足したため、翌年度分と合わせて、必要な消耗品費に充てる予定にした。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Expression and Function of Chemokines in Bovine Endometrium and Embryos2021

    • 著者名/発表者名
      Chisun Yun、Daichi Nishino1、Shutaro Horaku、Nobuhiko Yamauchi
    • 学会等名
      日本畜産学会第128回大会
  • [学会発表] Analysis of WNT/β-catenin pathway in Bovine Endometrial Cells In Vitro2021

    • 著者名/発表者名
      潘 韜、尹 治善、西野 大地、寶楽 修太郎、山内 伸彦
    • 学会等名
      日本畜産学会第128回大会

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公開日: 2021-12-27  

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