研究課題/領域番号 |
19K22320
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉田 均 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究領域長 (30355565)
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研究分担者 |
黒羽 剛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (50415155)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 閉花受粉性 / ゲノム編集 / 変異創成 / イネ / ベースエディター / アミノ酸置換 / 花器官 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
作物の実用形質の多くは、キー遺伝子の「マイルドな変異」によってもたらされるため、画期的な実用品種を作出するためには、多様な変異群の創出と最適変異の選抜の効率化が重要である。「指向性進化」は、試験管内でのランダムな変異の創出と有用アリルの選抜によって最適変異を取得する手法であるが、これを次世代ゲノム編集技術と組み合わせることによって、これまでにない画期的な作物を創出することが可能となる。 本研究では、提案者らが見出したイネ閉花受粉性の改良をモデルとして、原因転写因子の指向性進化を行い、最適な活性を持つ変異を選抜する。さらに、改良型Cas9酵素等のさまざまな次世代ゲノム編集技術を駆使してこの変異をイネに導入し、形質の最適化について実証する。 令和2年度は以下の研究を行った。 閉花受粉性イネ変異体spw1-cls1においては、SPW1転写因子のI45T変異がパートナーであるOsMADS2タンパク質との結合能を低下させ、閉花性および安定した稔実率をもたらすが、低温下ではSPW1-I45TとOsMADS2との結合が復活するため、spw1-cls1は開花してしまう。一方、よりシビアなspw1-cls2アリルでは、低温下での開花は見られないものの、稔実率が低下する。この問題を克服するため、酵母ツーハイブリッド(Y2H)法により、OsMADS2との結合能をI45T変異よりも低下させる9種類のアミノ酸置換変異を同定していたが、本年度は新規のスクリーニングを行い、18種類の新規有望変異を同定した。塩基置換型ゲノム編集酵素(Adenine base editor(A-to-G)およびCytidine base editor(C-to-T))を用い、3種類のアミノ酸置換変異体の作出に成功し、一部で閉花性を確認した。また、新規変異についてもNG型の塩基置換酵素を用いたゲノム編集ベクターの作成を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、酵母ツーハイブリッド法を用いて目的変異の同定に成功し、同変異を持つ植物体を創出するためのゲノム編集ベクターを構築し、イネに導入した。一部についてはすでにゲノム編集隊を獲得し、閉花性の確認に成功している。 今後は、先行して獲得した系統を用いて温度反応性を確認するとともに、新規変異を持つゲノム編集体の作出を完了できるものと予想される。 以上のように、研究は計画に沿って順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に作出したアミノ酸置換変異体については、次世代でホモ個体を選抜し、閉花性と稔実率、温度反応性を詳細に調査する。 また、SPW1 cDNAへのランダム変異導入を行った後、酵母ツーハイブリッド法によって、OsMADS2との相互作用をわずかに低下させる変異の探索については、複数のレポータージーンを用いることによって18種類の候補変異を同定している。多様な新規ゲノム編集ベクターを用いることによってこれらの変異をイネに導入することが可能と考えられるため、ゲノム編集ベクターを作成し、イネに導入し、研究期間内に変異個体の獲得を完了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム編集技術の進捗が著しい中、令和2年度は塩基置換型酵素を用いたゲノム編集イネの作成を進めるとともに、酵母ツーハイブリッド法による新規変異のスクリーニングを行った。先行して作出したゲノム編集イネの詳細な解析および酵母ツーハイブリッドで同定した新規変異を持つゲノム編集イネの作出と解析については令和3年度に行うこととしたため、796,955円を次年度使用額とした。 本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり物品費・旅費・謝金・その他に使用する。次年度使用額796,955円は、ゲノム編集イネの作出と塩基配列および表現型の解析に充てるものとし、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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