研究課題/領域番号 |
19K22322
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
都木 靖彰 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (10212002)
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研究分担者 |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (20399398)
成田 武文 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 研究員 (20640056) [辞退]
畑山 博哉 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 副主任研究員 (80614552)
浦 和寛 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90360940)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 魚類コラーゲン / 大直径コラーゲン線維 / 組織工学 / 細胞足場マトリクス / 水産加工副生物 |
研究実績の概要 |
研究実施計画 1.Ⅰ型線維形成,Ⅰ+Ⅱハイブリッド型線維形成過程の詳細観察 においては,その主要課題であるⅠ+Ⅱハイブリッド化の検証技術(超遠心分析)を確立できた.すなわち,超遠心分析により,研究に用いているチョウザメ浮袋Ⅰ型コラーゲン分子(SBC)と脊索Ⅱ型コラーゲン分子(NC)の解析をおこない,どちらもアテロ化がほぼ完全におこなわれた単分子であることを確認すると共に,S値(超遠心時の移動度)が0.25違っており(SBC<NC)両者を超遠心分析で分離できることを示した.また,SBC線維形成過程のAFM観察に成功した. 研究実施計画 2.SBC線維の細胞機能活性化能の実証 に関しては,SBC線維上で培養したMC3T3-E1骨芽細胞の分化過程を定量PCRにより調べ,直径が小さい細い線維上で培養することで,SBC分子もしくはブタコラーゲン分子上で培養したものと比べて培養後期にⅠ型コラーゲンおよびオステオカルシンmRNAの発現が有意に高まることを証明した.両mRNAは骨芽細胞分化のマーカー遺伝子であり,これらの発現が上昇することは骨芽細胞分化が進展して細胞が活発に骨基質タンパク質を分泌していることを示す.SBC線維の効果が培養後期に現れたことから,SBC線維は骨芽細胞の分化の速度を上げるというよりも,分化した骨芽細胞の活性を上昇するものと考えられた. 加えて,SBC線維形成におよぼすリン酸緩衝液濃度の効果を調べ,リン酸緩衝液濃度が高いと線維形成速度が低下して太い線維が形成されることを見いだした.また,リン酸緩衝液濃度を調節することで,細胞培養ウェルにコーティングされるSBC線維の太さを調節できることを示すと共に,線維の太さに反応してL929線維芽細胞の形態が変わることを見いだした.本成果は学術論文として発行した(doi: 10.1016/j.ijbiomac.2020.01.128).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画 1.Ⅰ型線維形成,Ⅰ+Ⅱハイブリッド型線維形成過程の詳細観察 に関しては,その主要課題であるⅠ+Ⅱハイブリッド化の検証技術(超遠心分析)を確立できた.また,線維形成過程の高速AFM解析をおこなった. 研究実施計画 2.SBC線維の細胞機能活性化能の実証 に関しては,SBC線維上で培養したMC3T3-E1骨芽細胞の分化過程を定量PCRにより明らかにできた.また,同細胞の遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析するためのマイクロアレイ解析の試料調整をおこない,解析を外注先に発注した.しかし,試験期間中に使用している細胞の分化能が低下していることが発見されたことで細胞培養をやり直したことが原因となり,外注が遅れ,詳細な解析は2020年度に持ち越された.加えて,SBC線維の線維化に用いるリン酸緩衝液の濃度を調節することで線維径を制御する技術を開発し,論文として受理された. 以上のように,予定していた計画以上に進展した部分(SBC線維の直径とリン酸緩衝液濃度との関係)と予定通りに進展した部分,予定より若干研究が遅れている部分(マイクロアレイ解析)があるため,おおむね順調に進展している」と判定した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画 1.Ⅰ型線維形成,Ⅰ+Ⅱハイブリッド型線維形成過程の詳細観察 に関しては,2019年度に開発した超遠心分析技術を用いて,Ⅰ型線維形成,Ⅰ+Ⅱハイブリッド型線維形成過程の詳細観察をおこなう.また,電子顕微鏡および蛍光免疫組織学的観察を遂行する. 研究実施計画 2.SBC線維の細胞機能活性化能の実証 に関しては,マイクロアレイ解析のデータの詳細な解析と,その後の定量PCR解析をおこなう.また,SBCを用いた三次元培養技術の開発,Ⅱ型コラーゲンを用いた線維コーティング技術,三次元基材の開発,Ⅰ+Ⅱハイブリッド線維コーティングなどの新規技術開発を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ解析を外注したが,その解析が2019年度末までかかったため,その後の解析(qPCRによる発現確認など)を2019年度内におこなうことができなかった.このため次年度使用額が生じた.マイクロアレイ解析が遅れた理由は,細胞培養1日目のデータが重要であると判断したため,1ディッシュあたりの細胞数が少なくなり,多くのディッシュを用いた大量培養が必要になったためである.また,RNAの精製も必要となり,予定以上の時間がかかった.マイクロアレイのデータの詳細な解析とqPCRによる解析は2020年度におこなう.
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