2020年度も引き続き、15℃で初代培養したマガキ血球にOsHV-1を含む感染マガキ組織抽出液を加え、ウイルスの増加を試みた。その結果、血球を加えた培養液中では、培養直後に比べて3日後にはウイルスコピー数が大幅に減少したが、7日後には増加に転じた。一方、血球を加えていない対照区の培養液内でも3日後から7日後にも同様の傾向が見られたため、血球を加えたことによる増加であるか、結論を出すことができなかった。 そこで、15℃の培養条件はOsHV-1の増幅には低いことが考えられたため、培養温度を20℃に上昇させて実験を繰り返し行った。しかし、培養温度を20℃にすると、もともとマガキ体内に共存していた細菌類や原生動物の増殖が原因と見られるコンタミンがしばしば起こり、正確な評価が困難となった。 そこで、血球よりも滅菌や洗浄しやすく取り扱いが容易で、かつOsHV-1の感染が起こると想定された鰓、外套膜と心臓の組織を採取し、念入りに抗生物質入り海水で洗浄した上で初代培養した。そしてOsHV-1ウイルスを含む感染マガキ組織抽出液を加え、ウイルスのin vitro培養を25℃で試みた。その結果、外套膜組織では初代培養がうまくいかず、心臓組織を初代培養した区では組織は正常に保たれたものの、培養を行って7日経過しても培養上清にも組織自体からもOsHV-1は検出できなかった。一方、鰓組織の場合、培養7日後の組織から検出されたウイルスコピー数は培養上清内に含まれるウイルスコピー数よりも多く、鰓組織に含まれる細胞内にin vitro条件にて感染が成立し増幅を開始したと考えられた。
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