研究課題
「妖精が輪を作ってその中で踊る」と伝えられてきたフェアリーリングについて、研究代表者らがフェアリーリングという未解明な生命現象を説明する分子群をキノコから発見したことで、その謎解きに終止符が打たれた。本研究では、コムラサキシメジとシバとの共存培養により、両者の成長が促進されることが明らかになっている。そこで、まずはシバの成長促進の要因となっている遺伝子を同定することを目的として、コムラサキシメジとの共存によって、シバで発現が変動する遺伝子をRNA-seqによって解析を続けた。トランスクリプトーム解析により、単独培養したシバとコムラサキシメジと共存培養したシバで発現している遺伝子を網羅的に比較した。コムラサキシメジのトランスクリプトーム解析により、フェアリー化合物の産生量が多い条件では一酸化窒素合成酵素(NOS)遺伝子の発現が上がることが明らかになっている。本研究課題において、コムラサキシメジのゲノムにはNOSによって産生されたNOを一酸化二窒素に還元する一酸化窒素還元酵素をコードする遺伝子が2個存在することを明らかにした。今回、2個のP450nor遺伝子の発現を調べた結果、フェアリー化合物の産生量が多い条件ではP450nor遺伝子の発現が2個とも低下していることが明らかになった。つまり、NOの量は、NOSの発現上昇によるNO産生量の増加とP450nor遺伝子の発現低下によるNO還元量の低下という、合成と分解のバランスによって制御されていることが示唆された。また、フェアリー化合物の産生量が多い条件ではNitric oxide synthase-interacting protein(NOSIP)の発現も上昇しており、菌類ではほとんど調べられていないNOSIPの機能解析も今後の課題である。
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