研究実績の概要 |
セルロースのマーセル化とはセルロースのアルカリ膨潤処理のことを言う。マーセル化によりセルロースの結晶構造はセルロースI型からセルロースII型に変化する。セルロースI型はセルロース分子鎖が平行に、セルロースII型は逆平行に配向していると言われている。本研究では、隣り合う分子鎖が逆平行であるセルロース分子鎖集合体を合成し、『マーセル化がセルロース分子鎖の方向に与える影響』に関して新知見を得る。研究計画に従い、2年目の本年度は下記の通り成果を得た。 1. 非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体の収率の向上: cellobiose octaacetateから1段階の反応で誘導できるphenyl 2,3,4,6-tetra-O-acetyl-β-D-glucopyranosyl-(1→4)-2,3,6-tri-O-acetyl-1-thio-β-D-glucopyranosideを出発物質とし、非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体をより高い収率で得られる合成経路を確立した。 2. 逆平行鎖モデル化合物の合成: (1) 還元末端グルコース残基1位にアジド基が導入されたセロビオース誘導体を3-(triisopropylsilyl-propargyloxy)-5-(propargyloxy)-benzyl alcoholと反応させ、(2) その後triisopropylsilyl基を除去し、(3) 得られた化合物を非還元末端グルコース残基4位にアジド基を導入したセロビオース誘導体と反応させ、逆平行鎖モデル化合物を合成した。 以上、セルロース分子のモデルとしてのセロビオース誘導体の合成はほぼ完了した。
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