研究課題/領域番号 |
19K22336
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北村 真一 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (40448379)
|
研究分担者 |
仲山 慶 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (80380286)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | スクーチカ症 / Miamiensis avidus / 病原性因子 / 細胞外プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
スクーチカ症は海産繊毛虫Miamiensis avidusを病原体とする魚類寄生虫病の一つで、養殖魚や水族館で飼育されている観賞魚に甚大な被害を及ぼしている。有力な感染症対策としてワクチンがあるが、魚類の寄生虫病に対するワクチンは一つも商品化されていない。その理由として、多くの寄生虫には生活史が存在し、抗原性が変化すること、培養が困難であること、ゲノム情報が少なく組換えワクチンの開発が困難であることが挙げられる。これまでに申請者らは、本虫の細胞外プロテアーゼ(ECPs)が細胞を溶解することを見いだし、病原性因子の一つであることを明らかにした。このことから、分泌性の病原性因子を抗原としたワクチンが開発できるのではないかという発想に至った。本課題ではゲノム編集技術を応用し、病原性因子であるプロテアーゼ遺伝子を特定し、それを用いた世界初の魚類寄生虫のワクチンを開発することを目的としている。 研究を大きく分けると、(1) 遺伝子発現解析によるワクチン候補となるECPsの探索、(2) ゲノム編集のためのゲノム解析、(3) ゲノム編集によるECPs遺伝子のノックアウト、(4) 変異株の病原性の確認、(5)ワクチン開発となる。昨年度は、(1) 網羅的遺伝子発現解析を行うために、どのグロースフェーズでECPsを分泌しているのかを調べた。魚類株化細胞に対する細胞毒性を指標として、M. avidus培養0日目-7日目までのECPs活性を測定した。その結果、培養4日目以降(10^5 虫体/mL以上)に高いECPs活性が認められた。また、(2) ゲノム編集を行うために必要なゲノム解析も行った。その結果、164個のペプチダーゼが検出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事業計画のうち、Miamiensis avidus 3株のゲノム解析は終了し、多くのプロテアーゼ遺伝子の検出に成功した。また、本虫がどのグロースフェーズで細胞外プロテアーゼを分泌しているのかを明らかにできたことから、遺伝子発現解析を実施するための基礎的知見は十分に得られたと言える。遺伝子発現解析には至らなかったものの、サンプル準備をすれば何時でも開始できる状態にあり、概ね順調に研究が進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果から、M. avidusが10^5 虫体/mL以上になると、十分に細胞外プロテアーゼを分泌することが明らかになった。そこで、本年度は、10^5 虫体/mLと10^6 虫体/mLの2タイムポイントで本虫のサンプリングを行い、定法により次世代シーケンサーで網羅的遺伝子発現解析を行う。得られた結果からプロテアーゼ遺伝子を抽出、発現量をランキング付けし、病原性因子の候補遺伝子を決定する。ターゲット遺伝子を決定後、昨年度得られたゲノム解析の結果に基づいて、ゲノム編集実験を行い、プロテアーゼ遺伝子をノックアウトする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度ケアンズで開催される10th International Symposium for Fish Parasitology and Australian Society for Parasitology Annual Conferenceの口頭発表にエントリーしたものの新型コロナウイルス感染症の拡大により次年度に延期された。次年度に再エントリーする予定である。
|