研究課題/領域番号 |
19K22344
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 康博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50202213)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 食選択 / 外部化 / 簡便化 / 食の価値 / Best-Worst Scaling / WEBアンケート |
研究実績の概要 |
昨年度は2020年1月に第1回WEBアンケート調査を実施し、本年度は2020年11月に第2回WEBアンケート調査を行った。第2回調査では、50,000名(北海道と沖縄県以外のすべての都府県在住者を対象に、「東北・関東・静岡・甲信越」「近畿・北陸・東海」「中国・四国・九州」の地理的区分での20代から70代の男女別・年齢別の人口比で回答数を割り付けた)を対象としたスクリーニング調査、その回答者からランダムに回答を求めた1,043名に対する本調査を行った。 両アンケート調査のデータをもとにBest-Worst Scaling(以下BW)分析によって計測したfood values(食の価値)のクラスター解析において頑強な結果を得ることができ、そこから価格の重要度が低い一方で多くの項目を相対的に重視している消費者階層(C1)、持続可能性に関する項目などを特に重視していない消費者階層(C2)、安全性を特に重視している消費者階層(C3)、価格重視の消費者階層(C4)を特定することができた。 このクラスター分析結果を踏まえて、食事準備への手間のかけ方について検討を行った。このアンケート調査がコロナ禍において実施されたことで、感染拡大による制約がある前と後での比較を行えることとなった。食事準備の各過程(メニューの考案、買物、料理)から苦痛を感じていた時の有無について、クラスター間の違いが明らかにされた。例えば、食事準備に苦痛を感じていた人々は、複数人世帯や子供のいる世帯で多く観察されているのだが、そこでは感染拡大に制約される自身と家族の生活のあり方に配慮しながら、他の家事や育児などとの間で時間の再配分を再検討して食事準備の手間を軽くしていったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同じ規模のWEBによるアンケート調査を2回実施することができたことにより、本研究で想定している食事の準備に「手間をかける」「楽しむ」という人や場面が存在すること、そしてそれを「生きるための食」(A食)と「楽しむための食」(B食)という二元論的な枠組みで分析しうること、このことが要因になって消費者が異なったグループを形成していることとその形成要因、を分析することができた。 新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会生活に厳しい制約がかかり、在宅勤務と社会活動の自粛を1ヵ月以上にわたって強いられることとなった。このウィズコロナ社会における食行動を観察しつつ、「生きるための食」(A食)と「楽しむための食」(B食)の本質を解明することについて、現在取り組んでいる。なお、昨年度末には2021年1月時点で感染が収まって、アフターコロナ状況下でのWEB調査を再度行うことを想定していたが、緊急事態宣言が発出される状態であったために、その計画は実行できなかった。 なお、本研究では挑戦的研究として、f-MRI(機能的核磁気共鳴画像)を利用した脳科学的な分析や感応評価分析等の可能性について専門家に意見を求め、将来の学際的研究へ発展させるための準備を行うこととしていたが、この研究を通じて意見交換をすることができ、別事業でそのような研究を実行できることになった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の感染状況からすると、2021年度中にアフターコロナ状況下における食選択の二元論的行動についてWEB調査を行うことはできないと判断される。そこで、その課題は断念することとして、食選択の二元論モデルをベースにした食の意識や選択に関するWEB調査を行うこととする。具体的には風評被害の分析を行うこととして、放射能汚染などの食品安全への懸念が起きているのは、「生きるための食」(A食)なのか、「楽しむための食」(B食)なのかを明らかにするともに、そのような意識を引き起こす社会心理的背景を検討する。この分析を通じて、食選択の二元論モデルの有効性を検証するとともに、今後の研究の展開について総括することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度中にアフターコロナ状況下における食選択の二元論的行動についてWEB調査を行うことを想定していたが、現在の感染状況からすると実行を断念せざるを得ない。そこで食選択の二元論モデルをベースにした食の意識や選択に関するWEB調査を利用した風評被害のメカニズムの解明を目指す別調査を行うこととした。
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