研究課題
西日本豪雨災害においは,多くのため池が損傷を受けた.この決壊および損傷原因の中で,パイピングとせん断破壊に対しては,堤体内部の弱部の推定が重要である.地質調査は,ボーリングが基本であるが,非常に時間とコストがかかる.この問題を解決するのは,最も簡便に地質情報(ここでは,地盤強度)を計測できる物理探査が最も有効な手段と考えられる.本研究では,宇宙線の一つであるミュー粒子物理探査を利用して,地盤同定の高精度化を図る.この目的に対して,効率的に多点でミューオン探査を実施するため,電気式コーン貫入試験(CPTU)による穿孔を利用したクロスホールミューオン探査手法の確立を目指してきた.2022年度は,最初に模型土層を用いた基礎実験について,2021年度の計測結果を詳細に検討した.結果,小規模な模型実験土層を用いた実験で高精度な結果を得ることは困難であることが明らかとなった.そこで,ミューオンによる密度の同定精度を検証するため,大規模な現地計測を実施することとし,ロックフィルダムでの計測を実施した.ロックフィルダムの監査廊に計測器を設置し,半年の計測を行った.フィルダムでは,材料の密度が分かっているため,計測結果の検証を行うことができた.その結果,ミューオンは,ダム材料の密度を高精度で同定できるが,コア材料とロック材料の0.2(g/cm3)程度の微妙な相違の精密な同定は不可能であることも明らかとなった.クロスホールミューオンの開発に際しては,理論的考察の結果,CPT孔内で使用できるミューオンシンチレータの直径をD=3cm程度にする必要があるが,長期間の計測が必要であり,当初の計測計画の実施は困難なことが明らかとなった.したがって,代替案として,第一段階として,D=5.1cmの機器を開発することとした.
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