研究課題/領域番号 |
19K22351
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
足達 太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (50385506)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 福島 / 森林 / 中山間地 / セシウム137 / 節足動物 |
研究実績の概要 |
福島の森林には今なお多量の放射性セシウムが残存している。その多くは林床部に集積しており、森林内外に生息する生物の食物網を介して移動する。このような放射性セシウムの動態を把握し、福島中山間地の放射線環境の今後の推移が予測できれば、日常生活への復帰をのぞむ地域社会の合意形成に資するところが大きいとかんがえられる。そこで本研究課題では、福島中山間地において食物網の各栄養段階に位置する節足動物を採集し、放射性セシウムの摂取状況と各節足動物の捕食・被食関係にかんする定性的および定量的な分析をおこなう。 2019年度は福島県山間地での現地調査を4回実施した。森林・川岸・放牧地をふくむ調査地において、みつけとりによるクモ類やトンボ類など捕食者の採集と、植物質および動物質誘引剤をもちいたファネルトラップとピットフォールトラップにより、飛翔性昆虫および地上徘徊性昆虫のサンプルを捕獲した。節足動物の各サンプルについては、研究協力者の協力により、節足動物からの検出される放射性セシウムの定量と炭素・窒素安定同位体比分析による捕食・被食関係の分析をおこなった。 また、調査地周辺の空間放射線量率について、本科研費により購入したリアルタイム式シンチレーションサーベイメーター2台を駆使することによって、地表面にそった二次元的な測定を実施し、節足動物における放射性セシウム摂取量との関連をしらべた。さらに研究協力者の協力をえて、ドローンによる三次元的な空間放射線量率測定調査を予備的におこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地調査を順調に実施することができ、質・量ともに十分なサンプルをあつめることができた。また当初の計画にはなかったドローンによる空間放射線量率の予備調査を研究協力者の厚意により実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
節足動物サンプルからの放射性セシウム検出濃度と炭素・窒素安定同位体比の分析をすすめ、食物網における放射性セシウムの移行を定量的にあきらかにする。また、空間放射線量率の三次元データと節足動物の採集データをGISをもちいて集計・統合し、調査地における放射性セシウム分布の可視化をこころみる。
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次年度使用額が生じた理由 |
節足動物のサンプリングが予想以上に効率よく実施できたため、当初予定していた野外調査の回数を削減した。また、COVID-19感染拡大の影響で参加を予定していた学会や研究会が中止となった。未使用分については次年度の野外調査費およびサンプルの分析費用に充当する予定である。
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