研究課題/領域番号 |
19K22360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 正敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70211547)
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研究分担者 |
水野 理介 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (30273080)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | CPI-17 / 子宮 / 分娩 / 繁殖 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者が作出したミオシンホスファターゼ(MPPase)阻害因子CPI-17の欠損マウスの雌が妊娠期間短縮と産仔数増加という予想外の表現型を示した研究結果をもとに、これまで全く解明されていない、CPI-17の(1)雄の精子形成や受精能、あるいは、(2)雌の受精~着床~分娩に至る過程、における繁殖生理学的役割を明らかにすることで、家畜の新たな繁殖障害治療薬開発の基盤を構築する。
初年度は、妊娠期間についてWTとCPI-17欠損マウスで比較したところ、有意にCPI-17欠損マウスで妊娠期間が延長していることを見出した。予備実験段階では、KOマウスの妊娠期間が野生型に対して短いという逆の結果がでていたが、例数を重ねて解析を継続し、全てのデータを集計したところ有意に妊娠期間が延長する結果に至った。さらに、妊娠末期ならびに発情期の子宮平滑筋のオキシトシン収縮性について野生型マウスとCPI-17欠損マウスで比較したところ、CPI-17欠損マウスにおいて収縮性が減弱していることが明らかになった。我々はこれまでの研究成果として、ラットの子宮における妊娠、非妊娠時のCPI-17の発現量を比較したところ、妊娠末期にはCPI-17の発現量が有意に増加していることを見出だしている。以上の成績を総合すると、妊娠期間の延長に子宮平滑筋の運動性低下が一部関与する可能性が考えられた。
さらに、野生型マウスとCPI-17欠損マウスにおいて産仔数について定量したところ、興味深いことにCPI-17欠損マウスにおいて産仔数が有意に多い(多産)であることを見出した。現在、排卵数に差がないかなど、さらに解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はマウスの非妊娠、妊娠マウスを作出して研究に使用するため、妊娠動物を用意することに時間と労力を要する。本年度は、夏場にマウスの繁殖力が異常に低下してしまい、研究の推進が一時困難になってしまった。11月より回復してマウスの繁殖、並びに妊娠マウスの供給が十分できるようになったものの、研究の進捗状況が遅れ気味である。さらに、1月からは予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大によりさらに研究の推進が停滞している。4月から研究が実質完全停止しており、妊娠マウスを用いた研究となるとさらに研究再開に時間がかかるため、繰越申請も念頭に置きながら研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
まず、CPI-17欠損マウスにおける妊娠期間延長の現象について、子宮平滑筋の収縮性についてさらに検討を重ねる。具体的には、収縮を制御するミオシンのリン酸化量の測定や、子宮平滑筋層の妊娠・非妊娠での形態学的変化について野生型、並びにCPI-17欠損マウスについて検討する。また、CPI-17のThr38をAlanineに置換したCPI-17[T38A]ノックインマウス(Thr38の非リン酸化模倣型ミュータントCPI-17をノックインしたマウス)を用いて、同様な現象が生じるのかなどについても検証する。すなわち、Thr38位のリン酸化の重要性について検証する。 続いて、現在得ているCPI-17欠損マウスにおける有意な産仔数の増加についての検証を行っていく。まず、精子側に原因があるのかを検証するために、野生型マウスならびにCPI-17欠損マウスの精子数と精子活動性について定量解析を行う予定である。異常が出た場合には、精子より得た総タンパク質やRNAを用いてプロテオーム解析やRNA-seq解析を実施し、原因分子についての同定を試みる。雄側に異常が出なかった場合は、まず、雌を用いて排卵数について定量解析する。その結果を見て、排卵数に有意な差があるなら輸卵管の運動性や卵巣の機能についてさらに解析を進める。排卵数に差がなく、産仔数に差が出る場合は、胎盤の形成異常などによる着床に問題がある可能性について探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はマウスの非妊娠、妊娠マウスを作出して研究に使用するため、妊娠動物を用意することに時間と労力を要する。本年度は、夏場にマウスの繁殖力が異常に低下してしまい、研究の推進が一時困難になってしまった。11月より回復してマウスの繁殖、並びに妊娠マウスの供給が十分できるようになったものの、研究の進捗状況が遅れ、経費についても100万円程度それが原因で使用できなかった。1月からは予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大によりさらに研究の推進が停滞しているが、何とか挽回したい。
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