研究課題
ヒト常染色体多発性嚢胞腎は両側腎臓に多数の嚢胞が進行性に発生・増大する最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患で、60代までに約半数が末期腎不全に至ることが報告されている。原因遺伝子としてはPKD1が85%、PKD2が15%を占めており、ヘテロ欠損することで発症する。極めて重要なことに、常染色体多発性嚢胞腎モデルとなるはずのPkd1ヘテロマウスは、生存期間中に殆ど嚢胞が発生しないため、モデルとならない。従って、よりヒトに近く、病態の再現が期待されるPKD1ヘテロカニクイザルを作製し、モデルとしての有用性を評価、疾患メカニズムを解明することを目的とするこれまでに我々は、カニクイザルPKD1エクソン4にSNP(一塩基多型:父親側(インドネシア産)、母親側(中国産))が存在することを見出しており、父親側のみ認識するgRNAを用いることで、受精卵の父親ゲノムのみを効率的に切断することを確認している。これにより、我々はPKD1ヘテロカニクイザル9頭を作出し、3頭について出産前後に病理検査を行ったところ、嚢胞が形成されていることを確認した。さらに6頭の飼育を継続し、エコーを実施したところ、生後直後と6ヶ月齢を比較することで嚢胞が大きくなっていることも確認したことから、ヒト多発性嚢胞腎の表現型を再現していることが分かった。採血についても半年に1回の頻度で実施し、クレアチンを始めとする腎障害マーカーの定期的チェックを行っている。今後、PKD1ヘテロカニクイザルの腎臓を用いて、尿細管のマーカーであるサイトケラチンとPKD1の多重免疫染色を行い、嚢胞を構成する尿細管細胞においてPKD1の発現が喪失しているかどうか確認する。さらに、各嚢胞の尿細管上皮層からDNAとRNAを抽出、ゲノム配列を決定し、各嚢胞に異なる体細胞変異が入っているかどうか確認することで、2ヒットモデルを直接的に検証する。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で既に述べたところであるが、これまでに我々は、カニクイザルPKD1エクソン4にSNP(一塩基多型:父親側(インドネシア産)、母親側(中国産))が存在することを見出しており、父親側のみ認識するgRNAを用いることで、受精卵の父親ゲノムのみを効率的に切断することを確認し、PKD1ヘテロカニクイザル9頭を作出し、3頭について出産前後に病理検査を行ったところ、嚢胞が形成されていることを確認した。さらに6頭の飼育を継続し、エコーを実施したところ、生後直後と6ヶ月齢を比較することで嚢胞が大きくなっていることも確認したことから、ヒト多発性嚢胞腎の表現型を再現していることが分かった。採血についても定期的チェックを行っている。腎臓における嚢胞を構成する尿細管細胞においてPKD1の発現が喪失しているかどうか確認することは重要であるが、それらは今年度中に実施し、2ヒットモデルを直接的に検証する。
進歩状況に書いたが、腎臓における嚢胞を構成する尿細管細胞においてPKD1の発現が喪失しているかどうか確認することは重要であるが、それらは今年度中に実施し、2ヒットモデルを直接的に検証する。さらに各嚢胞の尿細管上皮層からRNAを抽出し、RNA-seqを行い、野生型尿細管上皮細胞と比較することで病態に特徴的な遺伝子発現を探索する。
PKD1ヘテロカニクイザルにおける嚢胞のRNA-seq実験などをR2年度に実施予定であるが、特に遅れなどは見られない。
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Nature Communications
巻: 10 (1) ページ: 5517
10.1038/s41467-019-13398-6.