ヒト常染色体多発性嚢胞腎は両側腎臓に多数の嚢胞が進行性に発生・増大する最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患で、60代までに約半数が末期腎不全に至ることが報告されている。原因遺伝子としてはPKD1が大部分を占め、ヘテロ欠損することで発症する。極めて重要なことに、常染色体多発性嚢胞腎モデルとなるはずのPkd1ヘテロマウスは、生存期間中に殆ど嚢胞が発生しないため、モデルとならない。従って、よりヒトに近く、病態の再現が期待されるPKD1ヘテロカニクイザルを作製し、モデルとしての有用性を評価、疾患メカニズムを解明することを目的とする これまでに我々は、カニクイザルPKD1エクソン4にSNP(一塩基多型:父親側(インドネシア産)、母親側(中国産))が存在することを見出しており、父親側のみ認識するgRNAを用いることで、受精卵の父親ゲノムのみを効率的に切断することを確認している。これにより、我々はPKD1ヘテロカニクイザル9頭を作出 し、3頭について出産前後に病理検査を行ったところ、嚢胞が形成されていることを確認した。6頭の飼育を継続し、エコーを実施したところ、生後直後と6ヶ月齢を比較することで嚢胞が大きくなっていることも確認した。さらにその後もエコーを定期的に実施し、嚢胞の数・サイズが時間とともに増大することを見出したことから、ヒト多発性嚢胞腎の表現型を再現していることが分かった。採血についても半年に 1回の頻度で実施し、クレアチンを始めとする腎障害マーカーの定期的チェックを行っているが、これまでのところ変化は見られていない。
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