研究課題/領域番号 |
19K22366
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原山 洋 神戸大学, 農学研究科, 教授 (30281140)
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研究分担者 |
中嶋 昭雄 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (70397818)
坂瀬 充洋 兵庫県立農林水産技術総合センター, 北部農業技術センター, 課長 (70463396)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 応用動物 / 畜産学 / 雄性繁殖能力 / 精子 / 人工授精 / ウシ |
研究実績の概要 |
【令和元年度研究内容1-1】3次元ローテーション運動(3D-R)の発生制御機構(細胞内Ca2+の役割解明と細胞内Ca2+濃度調節分子の探索):Ca2+ポンプ(SERCA)がウシ新鮮射出精子の頸部に存在することを間接蛍光抗体法により明らかにした。またこのCa2+ポンプの活性を細胞膜透過性の阻害剤(thapsigargin)で低下させ,細胞内Ca2+濃度を上昇させると3D-Rを示すウシ新鮮射出精子が有意に増加した。以上の結果から,細胞内Ca2+がウシ新鮮射出精子での3D-Rの発生制御に関与することが示唆された。また頸部のCa2+ポンプが細胞内Ca2+を細胞内ストア(頸部余剰核膜)内に移動させることにより,ウシ新鮮射出精子での3D-Rの発生を抑制していると考えられる。 【令和元年度研究内容1-2】3D-Rの発生制御機構(ATPの役割解明とATP関連シグナル伝達分子の探索):検討を開始しているが,現在までに得られている実験結果には大きなバラツキがみられ,明確な結論を得るためには更なる追加実験が必要である。 【令和元年度研究内容2】3D-Rの有用性の検討(凍結保存精子での3D-Rの発生状態の調査):人工授精(AI)成績が異なる種雄牛候補10頭の凍結保存精子を融解したのちにPVA-PBSで希釈して運動様式の観察に供した。AI成績が最高値の雄では最低値の雄と比べて3D-R有の前進運動を示す精子の割合が高く,3D-R無の円運動を示す精子の割合が低い傾向にあった。また種雄牛候補10頭で得たデータをケンドールの順位相関係数で評価したところ,有意な正の相関関係は3D-R有の前進運動を示す精子の割合とAIでの受胎率の間においてのみ認められた。以上の結果から,AIでの受胎成績をより正確に予想するためには,前進運動を示す精子の3D-Rの有無を観察することが有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究内容1-1については計画通りの成果が十分に得られている。また研究内容2で得られた成果については研究計画段階での仮説とは逆の内容であったが,前進運動を示す精子の3D-Rの有無を観察することの有用性を示すことに成功しており,研究の進捗状態は順調である。しかし研究内容1-2については実験結果に大きなバラツキが認められ,実験の条件や手法に関する更なる工夫が必要であるが,解決の兆候は見え始めている。以上のことから,現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度研究内容1-2を継続するとともに,【令和2年度研究内容1】の3D-Rの役割に関する検討を開始する。検討項目には当初の計画(高粘性培養液に浮遊させた3D-R精子と非3D-R精子の運動パラメータと鞭毛波形の比較)の他に,3D-Rと受精能獲得(キャパシテーション)との関連性を究明するための実験を追加する。また【令和2年度研究内容2】の3D-Rの人為的調節法の開発および利用に関する研究では細胞内Ca2+調節分子の特異的阻害剤の効果を検討し,AIでの受胎成績と正の相関関係を示した3D-R有の前進運動を示す精子の割合(令和元年度研究内容2の成果を参照)を上昇させるための手法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行に伴い出張を中止したため。緊急事態発令の解除後の適切な時期に出張を行う予定である。
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