研究課題
【令和2年度研究内容1-1】ウシ凍結保存精子を融解し,未洗浄のまま,または3回遠心洗浄後に低粘性あるいは高粘性(2.5% ポリビニルピロリドン添加,卵管峡部の内腔と類似した状態を想定)の培養液に浮遊させて顕微鏡下で運動様式を観察した。その結果,低粘性培養液中では運動精子の大部分が3D-Rを示したが,高粘性培養液中では運動率は有意に低下し,また精子の多くが2Dの平面運動を示し,運動速度も低下する傾向にあった。これらの結果は,受精の場に通じる卵管峡部内腔の精子の移動に3D-Rは関与しない可能性を示唆している。【令和2年度研究内容1-2】ウシ新鮮射出精子に体外で受精能獲得(キャパシテーション)誘起処理を施し,その処理過程で精子に生じる運動様式の変化を顕微鏡下で観察した。処理前には多くの精子が2Dの平面運動を示したが,処理とともに3D-Rを示す精子が増加し,その後に鞭毛超活性化運動(ハイパーアクチベーション)を示す傾向が認められた。以上のことから,低粘性培養液中での3D-Rが受精能獲得過程にある精子の運動様式であること,および凍結保存精子では保存のための作業に由来する受精能獲得様の変化(クライオ・キャパシテーション)を受けることで融解直後に3D-Rを高率に示すと考えられる。【令和2年度研究内容2】3D-Rの人為的調節法を開発する目的で,ウシ新鮮射出精子に対するナトリウム・カルシウム交換体(NCX)の阻害剤SN-6での処理の影響を検討した。90分間の処理後に3D-Rを示す精子の割合はSN-6の添加濃度に依存して上昇し,50 microM処理区では約70%に達した。またSN-6は令和元年度の研究で使用したカルシウムポンプ阻害剤のThapsigarginよりも強い効果を示した。
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http://www.ans.kobe-u.ac.jp/pdf/64.pdf