研究実績の概要 |
本研究では、世界規模で収集されたヤギのDNA試料に対し、全ゲノム解析を用いた大規模DNA情報解析を利用した起源・伝播経路の解明と環境適応形質遺伝子の全貌解明を着想し、その足掛かりとなる包括的研究を実施することを目的とした。 本研究課題の当初予定では2022年度終了と計画していたが、数百個体でのミトゲノム解析が終了できなかった。この理由としては、コロナ禍に伴い、大量ミトゲノム解析に必要なREPTIDE試薬を提供している海外メーカーの吸収が行われ、しばらくの間試薬が提供されなかったためである。2022年度に試薬等の入手が可能となり、ミトゲノム解析も終了した。下記にこれも含めた研究課題全体の概要を示す。 mtDNAの東アジアにおける頻度分布調査とmtDNA全塩基配列決定による解析(ミトゲノム解析)、高密度SNP解析を中心に研究を進めた。その結果として、1) ハプログループBはパキスタン以東で高頻度に観察された。これは、ハプログループBが他のハプログループと異なる起源地を持つという先行研究を支持する結果となった。2) 480個体の中央・南・東南アジア在来ヤギのミトゲノム配列の決定に成功した。得られた配列から、年代推定を行った結果、サブハプログループB1とB2の分岐年代は30,1600~307,700年前と推定された。3) 高密度SNP解析では、49 集団4,155 個体を対象とした解析を行った。系統解析、遺伝構造解析、遺伝子流入解析より、フィリピンではヨーロッパ及び南アフリカ集団との遺伝的類似性が示唆される結果となった。この遺伝構造は数百年前の海洋貿易によってもたらされたことを新しい仮説として提示した。
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