研究課題/領域番号 |
19K22371
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
筏井 宏実 北里大学, 獣医学部, 准教授 (80327460)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 蚊 / 腸内細菌 / 卵形成 / 発生コントロール |
研究実績の概要 |
蚊は衛生害虫(ペスト)の代表的存在である。殺虫剤による「化学的対策」は、他の対策に比べて費用や手間がかからないことから、広く使われてきた。しかし昨今、薬剤耐性ペストの出現や、薬剤偏重による自然環境への悪影響が問題となっており、「化学的対策」以外の環境への影響低減を考慮した新たな対策がペストコントロールにおいて重要となっている。我々は、抗生物質によってハマダラ蚊の腸内細菌叢のバランスを破綻させ、ある特定の腸内細菌を増加させると、蚊の卵巣形成機能が低下することを見出した。さらに、この特定の腸内細菌は環境中や環境水の常在菌でもあった。 蚊の腸内細菌であり、且つ環境中および環境水の常在菌を利用することにより、蚊の発生をコントロールすることを最終目標とし、本研究は蚊の腸内細菌叢より卵巣形成機能を低下させる作用がある腸内細菌、且つ環境中の常在菌をスクリーニングし、分離同定後にその応用利用の可能性を検討する。さらに、根拠となるそれら作用機序を解明することを目的として実施されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではハマダラ蚊の腸内細菌叢の破綻による雌蚊への影響を検討した。ハマダラ蚊の腸内細菌叢の破綻は、様々な抗生物質を添加した10%スクロースで飼育する事により行った。羽化から数週間飼育し、1日絶食後30分の吸血を行った。吸血から2日目に雌蚊を解剖したところ、ある抗生物質において70%以上の個体において卵巣形成機能が抑制されていた。 次に無処置群、抗生物質群の中腸内細菌叢をクローンライブラリ法およびReal-time PCRにより解析した。卵巣形成機能を抑制した抗生物質群においては本来の中腸内細菌叢が破綻しており、中腸内における特定の菌の割合が大幅に上昇している事が明らかとなった。ここで特定の菌が卵巣形成機能の抑制に関与していると考えられた為、細菌の分離を試みたところ、蒸留水と、抗生物質群の吸血後の中腸から特定の菌が分離された。さらに、蚊の中腸から分離された特定の菌を10%スクロースに添加して蚊を飼育したところ、卵巣形成機能を抑制した。 このように研究計画通り、抗生物質を用いて卵巣形成機能を低下させる作用がある腸内細菌をある程度絞り込めたため、研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
蚊と腸内細菌叢との相互関係の研究結果より、“抗生物質投与 → 腸内細菌叢の破綻 → 特定腸内細菌の増加 → 卵巣形成機能の低下”の関係が成立すると仮説を立て、どのようにして卵巣形成機能を抑制したのかを順次研究計画に則って進めることによりその仕組みを明らかにし、最終目標である蚊の腸内細菌であり、且つ環境中および環境水の常在菌を利用することによる蚊の発生コントロール法の開発に向けた検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の基金受入れ時期と使用開始が9月からであったため、年度内での物品消耗品の使用額が少なくなった。 研究計画通り実施されているため、次年度使用額を翌年度分として請求した助成金と合わせて使用することにより、年度末から年度はじめの時期にも滞りなく研究実施が可能となる。
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