研究課題/領域番号 |
19K22379
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大平 高之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90727520)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | RNA / 5' 末端構造 / 5' cap修飾 / 出芽酵母 / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
RNAの5' 末端構造はRNAの安定性、細胞内局在、タンパク質の合成効率、ウィルスRNAとの識別に関わるなど遺伝子発現の調節領域として重要な役割を担うことから、RNAの5' 末端構造の形成メカニズムおよびその制御メカニズムを明らかにすることは重要である。 令和元年度は、出芽酵母に存在する複数の脱キャップ酵素やその類似体がRNAの脱キャップにそれぞれどの程度寄与しているかを調べるため、各酵素の遺伝子破壊株を構築し、その欠失によるRNAの5' 末端構造の分布への影響を調べた。解析対象として細胞内に多く存在し、かつ代表者によって研究実績のあるtRNA前駆体を解析対象とした。LC/MSによるRNA 5' 末端の構造解析の結果、多くの遺伝子破壊株では5' 末端構造への影響はほとんど見られなかったが、ある遺伝子破壊株においてメチル化グアノシンキャップを持つ前駆体の増加が確認された。また、別の遺伝子破壊株においてはX capを持つ前駆体の増加が確認された。本解析結果は、tRNA前駆体は複数の脱キャップ酵素が関与する複雑な分解制御を受けている可能性を示唆するものである。さらに、出芽酵母から単離精製したRNAの5’末端構造についてLC/MS解析による構造解析を行った結果、ごく一部のRNAにおいて既知の5' 末端構造とは分子量が一致しない末端を持つ前駆体が観察され未知の構造が付加されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画ではRNAの5'末端構造に基づいた分画法を確立し、これを様々な培養条件で培養した細胞や生物種に適用することを予定しているが、未だ十分に実験系が確立できておらず進捗に遅れが見られる。一方で、X cap酵素の分解に関わる酵素の特定や構造未知の5’末端構造の発見など大きな成果が得られた。これらの状況から達成度は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通りRNAの5'末端構造に基づいた分画法の確立を目指し引き続き条件検討を行う。また、tRNA前駆体の脱キャップに関与している可能性が示唆された脱キャップ酵素については、それぞれの組換え体タンパク質を調製し、in vitroにおける脱キャップ反応を行い実際にその活性を有するか確認する。また、新たに見出された未知の5’末端構造についてはその構造解析および形成に関わる酵素の探索を行う。
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