本研究において、細胞分裂回数をカウントするための基盤技術としてnCas9-CDAシステムを用いた細胞内連鎖反応技術の開発を行った。具体的には以下の2つのシステムの開発に成功した。 ①nCas9-CDAを利用して不活性型LoxPを塩基置換により修復し活性型LoxPに戻すシステム TATAloxPは13塩基の逆向きの反復配列と8塩基のスペーサーからなる13-8-13の構造をとる。Creが13塩基の反復配列を認識し、TATAloxPで挟まれた領域を切断することで反応が終了する。不活性型を得るためにCreが認識する両碗の13塩基の反復配列のT塩基をC塩基に置換した変異型TATAloxPのスクリーニングを行った。スクリーニングにはEF1aプロモーター下にTATAloxP-Stop-TATAloxP-EGFPを組み込んだコンストラクトを導入した293T細胞を用いた。Creにより切断反応が起こるとEGFPが発現する仕組みである。1つのT塩基のみの置換では、Creの反応が抑えられなかったため、複数のT塩基の置換を行い、完全不活性型TATAloxP(両腕の11番目と13番目のT塩基をC塩基に置換した変異型)を得た。 ②sgRNA連鎖システム:sgRNAのスキャフォールド部位のT塩基をC塩基に変異させることにより機能欠失させたsgRNA(sgRNA1)を別のsgRNA(sgRNA2)で修復するシステム。まず、EGFPのATGをGTGに置換した変異型EGFPを導入した293T細胞を樹立した。次に、変異型EGFP修復できるsgRNA1の機能欠失型の作成を行った。この機能欠失型sgRNA1をsgRNA2での修復する必要があるので、PAM配列を機能欠失型sgRNA1スキャフォールド領域に導入した。これにより、sgRNA2により機能欠失型sgRNA1の修復という細胞内連鎖反応の開発に成功した。
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