研究実績の概要 |
リソソームはエンドソームやオートファゴソーム等により取り囲まれた物質が最終的に到達する場所である。そこでは加水分解酵素によりタンパク質などの生体高分子が分解される。リソソームの機能異常は、中枢神経障害を含む様々な疾患の原因となる。このように重要なオルガネラであるリソソームであるが、実はリソソーム膜がどのような因子で構成されているか、現在全く理解されていない。その理由としては、1) リソソームを高純度に単離するのが難しい、2) 単離に成功してもリソソーム内部には多くの分解物が混入しているため、リソソーム膜の純粋な構成成分の分析が困難、が挙げられる。申請者は、上記の問題点を克服する方法を見出した。本申請課題は未だ謎に満ちたリソソーム膜の構成因子を統合的に理解し、その分子基盤を解明することで疾患の治療に繋げることを目的とする。 申請者はリソソームを高い純度で分離する方法として、近年開発されたリソソームに限局するTMEM192を細胞に安定的に発現する方法を採択した。HEK293T細胞にTMEM192-HAを発現させ、その細胞抽出液をanti-HA抗体を結合したビーズで沈降した。この画分はリソソームだけを高純度に含んでいた。この画分を大量に精製し、液体クロマトグラフィー-質量分析法によって各種リン脂質の測定を行った。これまでの報告ではリソソーム膜にはイノシトールリン脂質の一つPI(3,5)P2が多く集積することが報告されていたが、我々の結果では、PI(3,5)P2だけでなく多くのイノシトールリン脂質が高いレベルで検出された。今後、この結果の再現を確認するとともに、より精製度の高い方法の確立にも成功しているため、その方法でも検証してみる。
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