研究課題/領域番号 |
19K22392
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永野 隆 大阪大学, 蛋白質研究所, 招へい教授 (70272854)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 非対称細胞分裂 / 染色分体 / エピジェネティックス |
研究実績の概要 |
多細胞生物では、非対称細胞分裂は発生過程のみならず成体や癌組織において幹細胞が自らの集団を維持しつつ分化細胞を生み出す重要な役割を担う。一般に、細胞分裂後に娘細胞に継承される姉妹染色分体のエピジェネティック修飾は、細胞分裂前にDNA複製に引き続いて親細胞内の姉妹染色分体上で形成が始まる。しかし塩基配列が完全に同じ1対の姉妹染色分体を親細胞内で鑑別してエピジェネティック修飾を解析する方法は存在せず、エピジェネティック修飾の非対称性が非対称細胞分裂に先立って親細胞内で形成されるのか細胞分裂後に形成されるのかに関しては調べる方法がない。本研究はそこに道を拓く方法を新たに開発しようとするものである。
本研究で開発しようとする新技術には、解析しようとするゲノムDNAが細胞周期のS期に効率良く(しかし2本鎖DNAの両方ではなく片方のみが)BrdUで標識できていることが前提であり重要である。しかし研究開始後にこれを実現することが予想外に困難であることが判明したため、2019年度には結果的にこの点の条件検討を重点的に行なうこととなった。検討の結果、細胞周期を厳密に同調させることによって、ゲノムDNAの広範囲にわたり効率良くDNAの1本鎖のみをBrdU標識できることが分かった。
2020年度にはこの結果を踏まえ、BrdU標識染色分体上のエピジェネティック修飾を姉妹染色分体鑑別的に検出する技術の完成に向けて、エピジェネティック修飾依存的にその位置情報を検出するためのタグ配列をゲノムDNAに組み込む過程の条件検討を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発しようとする新技術には、解析しようとするゲノムDNAが細胞周期のS期に効率良く(しかし2本鎖DNAの両方ではなく片方のみが)BrdUで標識できていることが前提であり重要であるが、これを実現することが予想外に困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの課題であったBrdU標識の問題が解決されたことは、その標識を利用して姉妹染色分体を鑑別する技術の確立に近づいたことを意味する。今後は次のステップであるエピジェネティック修飾依存的にゲノムDNAに検出用タグ配列を組み込む過程の条件検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で開発しようとする新技術には、解析しようとするゲノムDNAが細胞周期のS期に効率良く(しかし2本鎖DNAの両方ではなく片方のみが)BrdUで標識できていることが前提であり重要であるが、これを実現することが予想外に困難であった。その問題解決のため計画の特定部分の検討のみを集中的に行なったこと、およびこの問題解決は研究代表者が並行して実施中の他の研究課題にも必要なためその研究課題の研究費も合わせて使用したことから、本課題の2019年度経費使用額は当初の予定より少なくなった。しかし残額は今後の研究開発に必要であり、翌年度の予定額と共に使用予定である。
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