研究課題/領域番号 |
19K22394
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
瀬川 勝盛 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門准教授 (20542971)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | リン脂質 / 細胞膜 / ホスファチジルセリン / ホスファチジルコリン / 非対称性 |
研究実績の概要 |
哺乳類細胞の細胞膜は、非対称なリン脂質二重層で構成される。すなわち、アミノリン脂質であるホスファチジルセリンとホスファチジルエタノールアミンは細胞質側の内層に限局し、ホスファチジルコリンやスフィンゴミエリンは主に外層に分布する。この細胞膜におけるリン脂質の非対称的な分布は、全ての哺乳類細胞で保存され る根幹的な膜構造の形態である。しかし、「なぜこのリン脂質の組成で、この分布様式でなければいけないのか?」あるいは「なぜ、進化の過程でこのようなリン脂質の分布様式が選択されてきたのか?」という問題について明確な答えが得られていない。本研究では、細胞膜リン脂質の分布を任意に制御する方法の確立を目指す。具体的に、アミノリン脂質であるホスファチジルセリンとホスファチジルエタノールアミンを特異的に外層から内層へ移層するリン脂質フリッパーゼの基質特異性を改変することで、任意のリン脂質を移層する改変フリッパーゼの樹立を試みる。当初、リン脂質フリッパーゼのcDNA配列にランダムに変異を導入し、基質特異性が変化したフリッパーゼをセルソーターを用いて取得する予定であった。一方、研究実施期間中の共同研究により、リン脂質フリッパーゼの構造的知見を得ることに成功した。この中で、フリッパーゼの10個の膜貫通領域の中で、基質特異性に重要と考えられる領域を同定することに成功した。実際、この領域に変異を導入することで、リン脂質フリッパーゼの気質特異性に変化が生じる結果を得つつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共同研究において、リン脂質フリッパーゼの構造的な知見を得ることに成功した。そのため、当初予定していたerror-prone PCR法を用いた変異体の網羅的な作製を行うことなく、いくつかの膜貫通領域に焦点を絞って変異体を作製することができた。この中で、フリッパーゼの10個の膜貫通領域の中で、基質特異性に重要と考えられる領域を同定することに成功した。実際、この領域に変異を導入することで、リン脂質フリッパーゼの気質特異性に変化が生じる結果を得つつある。以上から、当初の予定より、進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
リン脂質フリッパーゼの基質特異性が変化した変異体を生化学的に検討する。具体的に、変異体を発現した細胞の細胞膜におけるフリッパーゼ活性を、蛍光標識したリン脂質アナログを用いて詳細に解析する。また、フリッパーゼ変異体を精製し、試験管内におけるリン脂質応答性のATPase活性を評価する。続いて、この変異体を構成的に発現した細胞の細胞膜にどのような変化がおこるかを、生化学的手法や分子生物学的手法を用いて解析する。
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