研究課題/領域番号 |
19K22398
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本田 瑞季 九州大学, 医学研究院, 助教 (50828978)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | RNA-seq / 光工学技術 / トランスクリプトーム / ゲノム解析技術 |
研究実績の概要 |
生体組織には様々な細胞種が混在し、組織や細胞タイプごとに固有の遺伝子発現プロファイルをもつため、特定の細胞タイプを高純度に「分取」することが求められる。しかし、Laser microdissection法では微小な細胞集団の分離が難しく、cell sortingでは酵素処理によるダメージは避けられない。そこで、本研究ではこのような「分取」に依存しない、全く新たな顕微鏡で光照射された関心領域に限定したRNA-seq、Photoactivated(pa) RNA-seqの開発を目指す。これは光開裂型の化学修飾を施したcagedオリゴDNAを組織切片に滴下し、関心領域(ROI)に特定波長の光を照射後、常法通りのRNA-seqを行うだけで、ROIだけのゲノミクス情報が取得できるといった技術である。 2019年度はpaRNA-seqの確立に必要な原理証明および検出感度の検討をすべて完了した。さらに、paRNA-seqを胎生期の神経管の異なる3領域(光照射範囲:約75μm径、細胞数:約80個)に適応したところ、照射した各領域において約10,000の遺伝子が検出されたため、本手法の検出感度が非常に高いことが示された。次に、これらの発現プロファイル情報を次元圧縮したところ、光照射した領域ごとにクラスタリングされた。また、各照射領域で特異的に発現する遺伝子が204個得られ、実際にin situ hybridizationで領域特異的な発現を確認できた。つまり、本手法を用いることにより、組織切片上で光照射した領域に限定的な遺伝子発現プロファイルを検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り2019年度中にpaRNA-seqの原理証明および検出感度の検討を完了した。さらに、この技術を用いた神経管領域特異的な遺伝子の同定にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、光照射した領域に限定的な遺伝子発現プロファイルを高感度かつ定量的にプロファイリングできる技術を確立するため、1細胞から検出可能なpaRNA-seqの開発を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
paRNA-seqの検出感度は組織切片の前処理条件やcagedオリゴDNAの化学修飾数、また挿入部位で大きく異なるため、これらの条件検討に時間を要した。そのため、当初予定していた1細胞レベルでの解析ではなく、80細胞に限定したpaRNA-seqを実施したため、シーケンスのサンプル数が少なくなった。次年度は、その繰越金を用いて1細胞レベルでのpaRNA-seqを行い、実験の完遂をめざす。
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