研究実績の概要 |
KMT2A(MLL1)の染色体転座を原因とする、MLL再構成型(MLL-r)白血病では、異常なヒストンH3K4メチル化が観察されることから、野性型のKMT2Aや他のKMT2ファミリー分子(KMT2B-G)がエピゲノム異常の誘導に関わると予想されてきた。しかしながら、個別の遺伝子破壊からは、H3K4メチル化異常の明らかな原因分子の同定には至っていない(Thiel A, et al., Cancer Cell, 2010; Chen C, et al., Cancer Cell, 2014; Santos MA, et al., Nature, 2014)。近年、ダブルノックアウトマウスを利用した研究やメチル化酵素ドメインの生化学的研究から、H3K4メチル化酵素はそれぞれ重複した機能を持つことが示唆されている。しかしながら、全ての酵素活性の重複の組み合わせを機能的に評価するには、より効率的なセルベースの評価系の確立が必要である。本研究ではCRISPR/Cas9技術によるドメイン解析技術を発展させて、2種類の異なる遺伝子の機能ドメインを標的とするsgRNAを用いることにより、酵素活性の重複による制御機構の解明を目指した。まずヒストンメチル化酵素ファミリーを標的として、メチル化酵素活性ドメインを標的とするsgRNAパネルを作製した。2種類の類似する白血病細胞株間におけるsgRNAへの感受性の相違から、異なる依存性を示すヒストンメチル化酵素を見出した。そのヒストンメチル化酵素の欠損が別のファミリー因子への依存性を誘導するかについて、もう一つのsgRNAを同時に発現させて、細胞増殖抑制における相乗効果を解析した。以上の結果から、メチル化酵素の触媒ドメインにおける機能的重複が明らかとなり、白血病治療の新しい標的となることを見出した。
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