研究課題/領域番号 |
19K22402
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
篠原 美紀 近畿大学, 農学部, 教授 (80335687)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 人工染色体 / 減数分裂期 / 組換え |
研究実績の概要 |
減数分裂期組換えは子孫へ継承するゲノム情報の多様性を創出するとともに、ゲノム情報を半減するための減数第一分裂において染色体の正確な分配を保証する。私たちは減数分裂期の解析が容易であり、真核生物の中でセントロメア、テロメア、複製開始点など染色体の必須要素が明らかになっている出芽酵母で、人工染色体にさまざまな人工DNA配列を付加することによって引き起こされる減数分裂期組換えの挙動の変化について解析を行うことで、細胞内における染色体サイズの認識とそれに応じた交叉型組換え制御機構について明らかにし、次世代に継承可能にするための最小のゲノム要素を明らかにすることを目的として解析を行った。 人工ミニ染色体はpYACをベースに、選択的マーカーの異なる2種類を作成した。但し、DNA配列としてはこの2種類の人工ミニ染色体の間で4塩基の違いがあるだけであるため、相同染色体として機能することを期待して構築した。このプラスミドをそれぞれ持たせた、野生型出芽酵母を接合させて胞子を作らせ、その胞子由来の単数体細胞の栄養選択制からこの人工ミニ染色体が胞子にどのように分配されたかを解析した。その結果、この人工染色体の減数分裂期を通り抜けて保持されたのは40%で、その中で相同染色体としてメンデル則に従って分離したものは20%であった。つまり体細胞分裂期と減数分裂期では染色体の機能構造が異なることがわかった。一方で、線状と環状の人工ミニ染色体を比較した場合、どちらも現数台一文暦での不分離を示した。一方で、メンデル則に従って2つの栄養要求性マーカーが分離したものだけを抽出した場合には線状の人工ミニ染色体では比較的正確に分配されており、なにか重要な事象を乗り越えたものについては十分相同染色体として振る舞う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自作の人工ミニ染色体の相同染色体としての減数分裂期過程における挙動を概ね捉えることができたことから初期の本研究の課題はクリアできたと考えている。また、なにか減数分裂期過程において特定の事象がうまくいった人工ミニ染色体ポピュレーションに限定すると比較的安定に減数分裂期の間、相同染色体として振る舞うことができるという結果が得られた。これは次年度以降に研究を次のステップへ進めるための重要な情報となったことから概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、80%の人工ミニ染色体は減数分裂期を通過して胞子に安定に伝承されないことがわかった。一方で、少数派ながらメンデル則に従って片方の人工ミニ染色体が分離した場合は、2種の人工ミニ染色体相同染色体として振る舞う傾向が見られた。また、不安定化を示す人工ミニ染色体は減数第一分裂期に不分離を示すことで通過できないことがわかった。このことを踏まえて、減数第一分裂期の染色体分離に必要な交差型組換えが人工ミニ染色体上で効率よく形成されないことが減数分裂期を通過できない原因と考えて、人工的に組換えのホットスポットを人工ミニ染色体上に構築することで安定的に減数分裂期を通過することが可能になるかについて解析を行う予定である。また、それとは独立に、ランダムな配列を2種類の人工ミニ染色体に導入して減数分裂期中の保持率を上昇されるDNA配列を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な物品(抗体)が輸入のため年度内の納品が難しく、研究計画を変更して他の研究から先に行い、抗体を用いる実験を令和2年度に行うことにしたため。
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