モノオキシゲナーゼによる触媒反応における動的な分子メカニズムを解明することを目的としてマイクロ流体技術とX線自由電子レーザー(XFEL)による構造解析データの収集手法の開発を進めた。解析対象のタンパク質をマイクロシーディング法によって結晶の核形成を促すことで、微結晶を大量調製方法の確立を行った。XFELを光源として利用するX線回折データ収集では、XFELの強力な短パルスで1万個以上のタンパク質の微結晶から回折イメージを1枚ずつ連続取得する手法を用いるため、マイクロ流体技術を用いて結晶を連続的にX線ビームの照射位置に運搬を可能にするデバイスの設計と試作を行なっている。50-100ミクロンの結晶の導入を行い、SACLAのBL2 EH3においてテスト照射を行った。まず、結晶が流路に吸着しやすいように真空ポンプでデバイスを構成するPDMS樹脂の脱気を行った上で微結晶懸濁溶液を導入した。そしてデバイス専用の専用治具に挟んでマウントし、高精度試料ステージへ固定した。流路の穴には溶液中の酸化型結晶が隔離されており、SACLAのX線パルスを照射した。そして隣の穴がX線ビームの照射位置に来るように試料ステージを並進する作業を繰り返した。当初懸念されたのはXFELパルスの照射による流体デバイスの損傷であるが、特にそのような現象は観測されなかった。デバイスからのX線散乱が及ぼす検出器でのバックグラウンドノイズの強度レベルは許容範囲であることが確認できた。また、結晶からは分解能2.0オングストローム以上のX線回折スポットを記録した。これらの結果から、シリアルデータ測定に適用できる見込みが得られた。
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