研究課題/領域番号 |
19K22407
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
城口 克之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00454059)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | リンパ球 / 抗原 / 受容体配列 |
研究実績の概要 |
様々ながん免疫治療の方法が開発されている現在、多様ながんの撲滅へ向けて、複数のアプローチを組み合わせることも重要だと考えられている。その中で、がん抗原を体内に注入して免疫システムを活性化し、自己の力によりがんを攻撃する方法も、重要なアプローチの1つである。しかしながらこの手法はまだ多くのがんに適用されておらず、その原因の1つとして、がん抗原の同定が困難なことが挙げられる。本研究ではこのアプローチのボトルネックを解消するため、これまでにない高効率ながん抗原同定法の開発に挑戦する。システムが確立したら、がんの抗原のみだけでなく、ウイルスなどを含めた多様な対象の抗原特定に応用できる可能性が高い。 準備したT細胞とターゲット細胞を相互作用させて、セルソーターを用いて、ターゲット細胞が死滅するかを確認した。以前に死滅が確認できていたのだが、死滅する割合が安定しないことが分かり、細胞の濃度、相互作用時間、T細胞とターゲット細胞の比を変えるなどして条件を検討した。細胞の培養の影響も含め、今後も検討を継続する。 ターゲット細胞において多様な抗原を発現できるようにするため、ランダムな塩基を含む抗原用の配列をデザインした。すべての塩基をランダムにすると、全部の種類の配列をカバーできないため、抗原として機能するために必要だと考えられるアミノ酸を固定するものもデザインした。これにより、固定されたアミノ酸以外の部分は、すべての種類のアミノ酸をカバーできる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
準備した傷害性T細胞とターゲット細胞を相互作用させて、セルソーターを用いて、ターゲット細胞が死滅するかを確認した。死滅が確認できていたのだが、死滅する割合が安定しないことが分かり、細胞の濃度、相互作用時間、T細胞とターゲット細胞の比を変えるなどして条件を検討した。さらに顕微鏡下でも観察し、ターゲット細胞が死滅するかを検討した。死滅するターゲット細胞も確認されたが、死滅する割合を安定して算出するには至っていない。細胞の培養の影響も含め、セルソーター、顕微鏡観察の双方において条件を検討し、安定した結果、また、双方が一致する結果を得られるように検討する。 ターゲット細胞において多様な抗原を発現できるようにするため、ランダムな塩基を含む抗原用の配列をデザインした。すべての塩基をランダムにすると、全部の種類の配列をカバーできないため、抗原として機能するために必要だと考えられるアミノ酸を固定するものもデザインした。これにより、固定されたアミノ酸以外の部分は、すべての種類のアミノ酸をカバーできる可能性がある。 プライマリーの細胞を使う準備として、マウスからT細胞を精製した。
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今後の研究の推進方策 |
受容体と抗原がペアになっているT細胞とターゲット細胞を混合したときに、安定した割合で再現良くターゲット細胞が死滅する条件をさらに検討する。セルソーターや顕微鏡観察により確認する。 デザインした抗原用の配列をクローニングし、セルラインに発現させるシステムを構築する。もし多様すぎる配列が問題となった場合は、配列の多様性を少なくしてトライする。 様々な抗原を発現しているターゲット細胞と、特定のTCRに認識される抗原を発現しているターゲット細胞を混合し、後者だけが高い確率で死滅するかを検討することで、システムの確立を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の推進にともない、アプローチの順番を変えて効率化を図ったため、費用がよりかからない実験を先に進めることになった。このため、次年度使用額が生じた。 研究期間全体の予定としては大きな変更はないため、順番は変わるが予定どおりに予算を使用していく予定である。
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