研究課題/領域番号 |
19K22409
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
|
研究分担者 |
エレワ ヤセル 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (30782221)
市居 修 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (60547769)
中村 鉄平 北海道大学, 獣医学研究院, 客員研究員 (80786773)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | 精巣 / 卵細胞 / 培養 |
研究実績の概要 |
一般的な生命科学の知見に基づくと、哺乳類の雄は精子を、雌は卵子を生成し、それらの受精を経て、胚が形成される。一方で、遺伝的な性とは異なる形態的な性を獲得する場合もある。我々はこれまでの研究において、MRL/MpJマウスとAKRマウスの雄の曲精細管内に卵細胞が存在することを報告してきた。つまり、正常な哺乳類においても雄が卵子を作るメカニズムが潜在し、受精卵となる可能性を秘める。本研究の目的は、精子形成細胞が卵細胞に形質転換する(アダムからイブを作り出す)機構を発見・発展させ、オスゲノムのみによる個体の作出に挑戦する。 本年度は、有用な培養法と培養に用いる精巣内卵細胞の適切な回収時期を検討するため、雄のMRL/MpJマウスを用いて、精巣内卵細胞の出現時期の再検討を実施してきた。過去のデータを基に、新生子期から生後1ヶ月のMRL/MpJマウスの精巣内卵細胞を解析したところ、生後12日から14日齢でその出現率が高い傾向にあった。これらの時期は、精巣内卵細胞を効率よく回収できる時期であると考えている。また、MRL/MpJマウスの精巣形態の経時的解析において、精巣内卵細胞は、卵巣内の成熟卵胞に包含されるような卵細胞のようには発達していなかった。つまり、このような精巣内卵細胞の培養には、発生工学や不妊治療等で用いられている卵巣内の未熟卵胞の体外発育培養法やホルモン・成長因子の添加が有用であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、培養法の検討までの実施を予定していたが、精巣内卵細胞の出現率が低く、培養に供する数の確保が困難であった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は形態学的解析を中心として実施した、下記項目を残りの期間で実施し、明らかにする。 1)精巣内卵細胞と卵巣内卵細胞との比較:精巣内卵細胞はMRL/MpJマウスで高率に出現することを明らかにしてきた。MRL/MpJマウスの精巣と卵巣を用い、精巣内卵細胞と卵巣内卵細胞の形態比較と分子発現比較を実施する。減数分裂マーカーを用いた免疫電顕法、レーザーマイクロダイセクション法を駆使する。形態解析からニッチの候補を特定する。1細胞遺伝子発現プロファイリングをする。 2)精巣内卵細胞の回収方法の効率化:MRL/MpJマウス精巣を分離・破砕後、減数分裂マーカーを用いた精巣内卵細胞のセルソーティング法を検討し、確率する 3)精巣内卵細胞からの個体作出:2)の方法で分離した精巣内卵細胞と媒精した精子を用いて体外受精を実施し、体外発育および受精卵移植を行い、個体の作出を試みる。ゲノムインプリンティングの影響を考慮し、メチル化を精査し除去する方法の考案を想定している。 4)分子基盤の再構築:精巣内・卵巣内卵細胞の遺伝子発現プロファイリング比較から、両卵細胞最大の特徴を明らかにする。MRL/MpJマウス精巣からセルトリ細胞、筋様細胞を分離し、ニッチ因子解明のためプロテオーム解析を行い、精巣内卵細胞出現メカニズムを解明する。 5)生殖幹細胞のカスタマイゼーション:精巣内卵細胞出現メカニズムをイヌおよびヒツジに応用し、精祖細胞細胞から卵細胞へと形質転換させる技術を確立し、生殖幹細胞のカスタム化を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で初年度予定していた培養法の検討に時間がかかっている。次年度に検討を実施するため、次年度使用額が生じた。
|