植物の成育を撹乱するアレロケミカルとしてキノコから単離されたフェアリー分子群は植物の体内にも微量に内在しており、新たな植物ホルモンとしての定義に合致しうる特性を有している。しかしながら、生理作用を引き起こすためのシグナル因子は未だ報告がない。そこで、フェアリー分子の作用秩序の解明を目指し、分子生物学研究に優れた研究材料であるシロイヌナズナを使って遺伝学的解析および分子生物学的解析を実施した。モデル植物シロイヌナズナの世界的な標準系統であるコロンビアはフェアリー分子群への感受性が弱く、4種報告されているフェアリー分子群のいずれにおいても400uM以上の高濃度でも既存の植物ホルモンのような顕著な生理作用が観察されなかった。一方、シロイヌナズナの野生系統にはフェアリー分子群への感受性の高い系統が存在することを発見し、その中で開花に長期の低温処理が必要でないE185系統に着目した。E184野生系統はAHXに対して高感受性を示し、400uMで種子の発芽が完全に阻害される。さらに、E185系統は数十uMのAHXに対して根の伸長阻害などが観察さることから、E185系統を使って遺伝学的な解析を進めることにした。E185系統の変異集団種子から39個体の変株の単離に成功した。これら変異株の植物体は大きく分けて、①生育過程で、萎れやすく、葉の形態が丸まった変異株群と②植物体の大きさが若干小さくなったものの、形態的にE185野生株と同等の変異株群の2種類に分類された。①については、植物ホルモンのアブシシン酸を欠損したような特徴を持つことが明らかとなった。②の変異株については原因遺伝子特定のためにNGSによるゲノム解読を行った。
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