研究課題/領域番号 |
19K22418
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
増田 真二 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (30373369)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 緊縮応答 / ppGpp / Mesh1 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエを主な材料とし、未知の動物型ppGpp合成酵素遺伝子を単離すると共に、ショウジョウバエの視細胞におけるppGppの機能を詳細に調べることで、既知のラパマイシン標的タンパク質(TOR)やインスリン様成長因子(IGF)のシグナルとは独立した、動物の新たな恒常性維持・栄養応答機構の存在を実験的に証明する世界初の試みに挑む。
1)動物型ppGpp合成酵素の単離実験 試験管内でppGpp分解活性を示す酵素Mesh1が後生動物から同定されているが、既知のppGpp合成酵素遺伝子は動物のゲノム上に見つからない。大腸菌の相補実験により、未知の動物型ppGpp合成酵素遺伝子の同定を目指した。具体的には、大腸菌のppGpp合成欠損株(relA-spoT二重変異体)に、マウスのcDNAライブラリーをランダムに導入し、最小培地で生育できない表現型を相補したサプレッサー株の単離を試みた。その結果、いくつかのサプレッサー株の単離に成功した。 2)組換えショウジョウバエの作成と解析 多彩な遺伝学的手法を導入できるショウジョウバエを用いて、時期・組織特異的にppGppを高蓄積する組換え体を作成し、その表現型を精査することで、後生動物におけるppGppの生理機能を明からにする。具体的には、多くの場合で致死性をもたらす因子の発現が可能な目の組織に着目し、目特異的なGMRプロモータ依存でGal4を発現するラインと掛け合わせることで、視細胞特異的に枯草菌のppGpp合成酵素YjbMを発現、ppGpp合成を誘導させ、その後の表現型を詳細に調べた。さらに、Mesh1変異体と掛け合わせ、Mesh1変異がppGpp蓄積に及ぼす影響を調べた。この実験により、ppGppの高蓄積が細胞死を誘導することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌欠損株にマウスのcDNAを相補させる実験により、大腸菌のppGpp合成欠損を相補したと考えられるいくつかのサプレッサー変異体の単離に成功したことが、本自己評価とした主な理由である。今後、単離した相補体が持つマウスの遺伝子を調べることで、これまで未知であった動物内のppGpp合成酵素遺伝子が明らかになると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究を継続的に発展させる。具体的な計画を以下に記す。
1)動物型ppGpp合成酵素の単離実験 昨年度までに、大腸菌のppGpp合成欠損株(relA-spoT二重変異体)にマウスのcDNAライブラリーをランダムに導入することで、最小培地で生育できない表現型を相補させたサプレッサー株の複数単離に成功している。今年度は、単離した遺伝子の塩基配列を決定することで、どのような遺伝子産物によりrelA-spoT変異が相補されるかをまず明らかにする。次に、この遺伝子が実際にppGpp合成活性を持っているのかを、精製タンパク質の試験管内実験などにより精査する。 2)組換えショウジョウバエの作成と解析 昨年度までに、目特異的に枯草菌由来のppGpp合成酵素を誘導することで、細胞死が誘導されることがわかった。今年度はこの理由を明らかにするために、YjbM誘導前と誘導後のppGpp量を精査するとともに、それに伴う代謝の変化をメタボローム解析によって明らかにする。このことで、ppGppが動物内でターゲットとする代謝系を明らかにする。また、上記1)の研究で動物型ppGpp合成酵素の候補が明らかとなった際には、その遺伝子のノックアウト体や過剰発現体の作成を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により、R1年度後半に予定していた予備実験が実施できず、その分の試薬の購入を次年度に繰り越したため。
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