研究実績の概要 |
本研究では、ショウジョウバエを主な材料とし、未知の動物型ppGpp合成酵素遺伝子を単離すると共に、ショウジョウバエにおけるppGppの機能を詳細に調べることで、既知のラパマイシン標的タンパク質(TOR)やインスリン様成長因子(IGF)のシグナルとは独立した、動物の新たな恒常性維持・栄養応答機構の存在を実験的に証明することを目的に研究を進めた。今年度の実績を以下に記す。
ショウジョウバエMesh1タンパク質の解析: 試験管内でppGpp分解活性を示す酵素Mesh1は、近年NADPH脱リン酸化酵素として機能することも報告された。このことは、Mesh1変異体で見られる表現型がppGpp分解活性の欠失によるものなのか、それともNADPHの脱リン酸化活性の欠失によるものなのかが不明であることを示している。この点を明らかにするために、NADPHの脱リン酸化活性を欠失しているが、ppGpp分解活性は失わないMesh1変異タンパク質を作出することを目指した。 昨年度までに、結晶構造よりMesh1がNADPHと相互作用する際に重要と思われたアミノ酸(W138, R142)それぞれに部位特異的変異を導入したタンパク質(W138FおよびR142T) の精製と、ゲノム編集技術によりそれらの変異をゲノムにもつショウジョウバエ変異体の作出に成功した。それらタンパク質の酵素活性を測定したところ、1つの点変異タンパク質がNADPHの脱リン酸化活性を失っていることがわかった。またそれら点変異をゲノムに持つショウジョウバエの表現型を調べたとところ、両変異体共に睡眠の時間などに影響を及ぼしていることが明らかとなった。今後精製タンパク質のppGpp分解活性を精査することで、Mesh1変異体に現れる表現型の原因と、Mesh1の機能の生理的重要性が明らかになると思い破れる。
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