オートファジーは、細胞内のタンパク質やオルガネラをリソソーム(酵母や植物では液胞)に運び込んで分解する機構である。オートファジーが誘導されると、隔離膜と呼ばれる膜構造体が形成され、その伸長により細胞質成分を包み込みながら、オートファゴソームを形成する。オートファゴソームがリソソームと融合することで、取り込んだ成分を分解する。これまでの研究から、オートファジーは細胞質成分を非選択的に分解するのに加えて、一部のタンパク質やオルガネラを選択的に分解している事が判っている。一方で、オートファジーが分解しない、もしくは選択的に分解を免れている細胞質成分があるかどうかについては不明であった。本研究では、こうしたオートファジー分解を受けにくい細胞質成分があるかどうかについて検証することを目的とする。 出芽酵母や分裂酵母を用いて、様々なタンパク質にGFPを付加し、その分解を観察した。しかしながら、全く分解されないタンパク質を同定することはできなかった。一方、オルガネラに局在するタンパク質は、たとえオルガネラ表面で細胞質側に局在しても、多くの細胞質タンパク質よりは分解が遅くなることが明らかとなった。さらに、オルガネラをオートファジーで分解する時に必要なレセプターを破壊した株に於いては、長時間のオートファジー誘導にもかかわらずオルガネラの分解がほぼ完全に抑制されていた。こうしたことから、オルガネラなどの構造体は、選択的に分解する機構を通じてのみ分解され、その選択機構を利用しなければ分解されないと考えられた。
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