研究課題
半索動物(ギボシムシ)と棘皮動物(ウニやヒトデ)は、歩帯動物クレードを構成する姉妹群で、三体腔性(前-中-後体腔)の幼生を共有する。半索動物は幼生の体腔プランと外胚葉をそのまま成体へと引き継ぎ、それぞれ吻、襟、胴体腔とそれを被う外胚葉となる。一方、棘皮動物は、幼生の左側にできる成体原基の中で五放射体制をつくり、成体へと変態する。棘皮動物のこの特異なボディープランの進化は、未だに動物学の謎として残っている。棘皮動物の放射線(歩帯)は、水腔/左中体腔から伸長する放射水管とそれを覆う歩帯外胚葉からなる。本研究の目的は、FGFシグナリングが歩帯を確立することを実証することによって、この謎を解くことである。棘皮動物の成体原基形成は、幼生外胚葉から陥入する羊膜が水腔と接することによって始まる。しかし、その相互作用の分子機構はわかっていない。申請者は、fgf8/17/18が羊膜外胚葉で自律的に発現する発現すること見出し、CRISPR/Cas9システムによってfgf8/17/18をノックアウト(KO)したヨツアナカシパン幼生の表現型を、共焦点レーザー顕微鏡光学切片から再構築した幼生の三次元像とWMISH法によるマーカー遺伝子発現との両面から解析した。fgf8/17/18 KO初期幼生において、原腸先端からの水腔形成と左後体腔(成体の口側体腔)の前方への伸長が抑制され、後期幼生では水腔からの放射水管の伸長と管足形成および左後体腔からの歯嚢原基形成が阻害された。さらに、放射水管をおおう歩帯外胚葉遺伝子 hh, otx, six3/6, foxaの発現も抑制されていた。最終的に、fgf8/17/18 KO幼生は成体原基を形成することなく、変態しなかった。本研究は、棘皮動物において、羊膜外胚葉fgf8/17/18が歩帯をふくむ成体原基形成を調節していることを明らかにした。
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Development
巻: 147 ページ: dev181040
10.1242/dev.181040
巻: 1472020 ページ: dev182139
10.1242/dev.182139
Communications Biology
巻: 3 ページ: article # 190
10.1038/s42003-020-0925-1