研究課題/領域番号 |
19K22421
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植田 美那子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20598726)
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研究分担者 |
金岡 雅浩 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10467277)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 植物受精卵 / ライブイメージング / 化合物スクリーニング |
研究実績の概要 |
受精卵の極性化と不等分裂は、個体発生の原点である。しかし植物では、受精卵内部でどのような因子が、どのような現象を制御するのか、いまだほとんど分かっていない。制御因子が得られていない理由としては、遺伝子の冗長性や、遺伝子欠損株の致死性のせいで、重要な機能を担う因子の欠損株が得られにくいことが考えられている。また、細胞内現象が分かっていない理由としては、被子植物の花の奥深くに存在する受精卵の内部を生きたまま観察する手法がなかったことが理由である。そんななか、研究代表者らはシロイヌナズナを用いて、植物の受精卵の内部を高精細にライブイメージングできる方法論を構築し、ミトコンドリアなどの細胞内構造体の動態を明らかにした(Kimata et al, 2020)。加えて、従来の遺伝学的スクリーニングの弱点であった、冗長性や致死性を回避して重要な制御因子を探索できる手法として、化合物スクリーニングに着目した。受精卵を含む胚珠のin vitro培養系を用いて網羅的に化合物スクリーニングを行った結果、受精卵の不等分裂を阻害する二種類の薬剤を見出した。標的因子の同定とさまざまな解析の結果、得られた二種類の薬剤がそれぞれ、微小管の配向と細胞板の形成とを特異的に阻害することと、コケ植物を含む多様な植物種でも同様の効果を持つことを突き止めた(論文準備中)。得られた成果について、多くの国内外の学会で発表するとともに、学術誌での公表にも至った(Susaki et al, 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らが独自に立ち上げた植物受精卵の精緻なライブイメージング系を用いて、さまざまな現象を見出し、成果発表にも至った。加えて、化合物スクリーニングによって得られた新規因子の解析により、細胞分裂の制御機構が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
化合物スクリーニングによって得られた制御因子の機能解析を完遂し、論文として成果をまとめる。さらに、細胞骨格やオルガネラ以外の細胞内構造体について作成した蛍光マーカー株に対しても、薬剤投与を順次行い、植物細胞における各薬剤の効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による影響で研究室での滞在時間に制限が生じ、実験が困難となった。次年度には、受精卵内部のさまざまな構造体を蛍光標識したライブイメージングマーカー株を栽培して、化合物スクリーニングで得られた二種類の薬剤を投与し、それぞれが細胞機能に果たす役割を明らかにする。
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