研究課題/領域番号 |
19K22422
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 成弘 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90346106)
|
研究分担者 |
本田 直樹 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (30515581)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 機械学習 / 細胞骨格 / 高速原子間力顕微鏡 / 表層アクチン |
研究実績の概要 |
I) 細胞内シグナル分子活性とアクチン単線維ダイナミクスとの相関イメージング 高速原子間力顕微鏡を用いて、表層アクチンおよび葉状仮足におけるアクチン線維をイメージングする技術を確立した。さらに、これらのアクチン動態を調節するシグナル分子の光活性化型(PA-RhoA, PA-Rac1, PA-Cdc42)を用いて、蛍光顕微鏡/高速原子間力顕微鏡下でシグナル分子の活性を制御する系を構築した。PA-Cdc42を発現する細胞の細胞辺縁部を488nmレーザーで断続的に刺激すると、葉状仮足の伸展が見られた。アクチンの動態に関しても若干の変化が見られるが、肉眼では捉えられないレベルであり、画像解析と機械学習に提供できる画像が得られつつある。また、葉状仮足のアクチン動態制御に関与すると考えられているSH3BP2に関しても、膜結合部位、SH3ドメイン結合部位、SH2ドメインを欠く分子を作成し、葉状仮足と糸状仮足の制御を可能にする系を構築することにも成功している。 II) 機械学習によるシグナル活性と分子構造動態との関係性解明 高速原子間力顕微鏡で得られたアクチン線維の連続画像から線維の情報を抽出する手法の確立に取り組んだ。二値化および各種フィルタを適用することで線維を抽出することに成功した。しかし一方で、ライブセルイメージングから得られた連続画像に関しては、問題点も数多く見つかった。ライブイメージングでは、細胞の状態が変化するため、画質が不均一となり、同じ画像処理でもアクチン線維を検出できないケースが多かった。この問題に関しては、i) 前後の画像から線維の位置・角度等を推測し、それに基づいて線維を同定する方法、ii) 各線維を検出するのではなく、画像全体の線維ネットワークを検出する方法、の両方の方法を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進行しているが、画像解析でいくつかの問題点も見つかっている。光刺激タンパク質を用いたアクチン動態の制御系の確立と、蛍光・高速原子間力顕微鏡の同時観察系の構築系に関しては順調に進行している。すでに、Cdc42やRac1を局所的に活性化し、葉状仮足や糸状仮足におけるアクチン動態を制御することに成功している。一方で、高速AFMで得られたアクチン線維の画像から線維構造を抽出する手法に関しては、抽出精度が画像の質に大きく依存するため、「研究成果」の項目で述べたとおりの方法で解決策を検討している。よって、全体としては、概ね予定通りに進捗していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、画像解析およびアクチン線維の抽出法の確立を継続する。画像中の各線維を抽出する必要があるかを検討しながらすすめる予定である。その一方で、すでに得られた蛍光画像とAFM画像とを用いて、機械学習に関するパイロット解析をおこなう。細胞内シグナル分子の活性に関する多次元データ(蛍光画像)を入力、アクチン線維の動的構造変化を「出力」として、それらの入出力変換を機械学習により明らかにする手法を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2月および3月に予定されていた国内学会の中止、および共同研究先であるオリンパスがテレワークに切り替えたことによる共同研究の中断などで、年度末に支出する予定であった旅費を次年度に繰り越した。オリンパスとの共同研究に関しては次年度に再開・継続する予定であり、その際に使用する。また、未使用の旅費に関しては、次年度に海外・国内旅費として使用する予定である。
|