研究課題
種内には、いわゆる環境型(エコタイプ)が存在する。エコタイプが確立するにあたっては、まず特定条件下では比較的適応度が高い遺伝子多型が増えることが必要であるが、これは揺らぎによりたまたま増えることもあるだろう。また、このような多型は移動や交雑があるために地理的拡散も起きるが、拡散よりも環境への適合性による自然淘汰圧が高い場合、またその環境の勾配がある程度以上である場合にエコタイプが確立すると考えられる。以上の仮説は、多くの人が考えることであろうが、実際にその現象が観察されているわけではない。私は、病原体応答の観点からシロイヌナズナのエコタイプが作られる途中の過程を観察しようと考えた。植物は病原体に応答すると成長が阻害されるため、病原体応答と成長はトレードオフの関係にある。従って、世界の様々な環境において、適応度の高い病原体応答レベルは異なっていると考えられる。私は、世界各地で採取された多くのシロイヌナズナの系統をストックセンターから取り寄せ、鞭毛タンパク質の一部であるflg22に対する応答を調べた。flg22は微生物に共通するPAMPSの一つとして働き、免疫応答を惹起するとともに成長を阻害する。成長阻害を指標に250系統のflg22応答を調べ、ゲノムワイド関連解析を行ったところ、特にスウェーデン南部地方の系統においてflg22受容体であるFLS2遺伝子座の多型に強い関連が見出された。個別遺伝子の遺伝子構造を調べているところであるが、いくつかの起源が異なるfls2遺伝子変異が広がっていることが見出された。
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Plant Biotechnology
巻: 39 ページ: 29-36
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Nature Plants
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