研究課題
本研究の目的は、革新的な植物への遺伝子導入法を開発することである。次世代シーケンサーによるシーケンス技術の革新によって多様な植物種のゲノム決定が比較的容易になり、ゲノム編集技術の出現により、多様な植物種、作物種の遺伝子改変が理論上可能となった。しかし、細胞壁を持つ植物細胞への遺伝子導入は容易ではない。遺伝子導入にはアグロバクテリウムを介した方法やパーティクルガンを用いた方法などが知られているが、いずれも遺伝子を導入した細胞やカルスからの植物個体の再分化が必要で、再生の条件を検討するにあたって膨大な時間が必要である。そのため、多様な植物種に応用できる遺伝子導入技術の開発が望まれる。本研究では、花器官および花粉に着目した非モデル植物における新しい遺伝子導入法の確立を目的とする。本年度は、ハマウツボ科寄生植物コシオガマを用いて、花器官にアグロバクテリウム菌液を垂らすことによるフローラルドロップ法を用いた形質転換系を検討した。レポーター遺伝子を用いてステージの異なる花に対してフローラルドロップ法を行うことにより、遺伝子の導入効率を求めた。GUS遺伝子を導入した花においては、蕾の半分程度に花びらが確認できるStageIにおいて花粉で強いGUS染色が認められた。導入効率は30%ほどであり、それより遅い段階のStageIIにおいては5%しかポジティブなものが見られなかった。しかし、GFPやRFPなどの蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入した場合には、花粉での蛍光を観察することができなかった。この結果はGUSによる染色が偽陽性である可能性を示している。
3: やや遅れている
花粉での蛍光レポータータンパク質の発現が確認できず、GUS染色が偽陽性である可能性が示された。レポーターポジティブな花粉の選別は難しいため、一過的な導入方法を用いたゲノム編集技術の開発を検討する。
花粉および花器官への一過的な遺伝子導入によるゲノム編集技術の開発を検討する。形質転換方法としては、フローラルドロップ法だけではなく、pollen magnetofectionやボンバードメント法を検討する。
技術補佐員の雇用を予定していたが、適当な人材がいなかったため雇用を見送った。その分次年度使用額が生じた。
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Frontiers Plant Sci.
巻: 10 ページ: 328
doi: 10.3389/fpls.2019.00328
巻: 10 ページ: 1056
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Curr. Biol.
巻: 29 ページ: 3041-3052
doi: 10.1016/j.cub.2019.07.086.