研究課題/領域番号 |
19K22433
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
別所 康全 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70261253)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 形態異常 / 奇形 / 体節 / 脊椎骨 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究では、脊椎骨の癒合を奇形発生のモデル系として、脊椎骨の原基である体節の細胞の集団的振る舞いに着目することで奇形・形態異常が惹起されるメカニズムの解明を試みる。脊椎骨は発生中期の分節構造である体節から分化する。体節は多数の細胞が集まったものであるが、ひとつの体節の前側半分と後側半分マーカーでは明確に区別される。前側の細胞は細胞塊を作り、隣の体節の後側の細胞塊と合わさることにより1つの脊椎骨が形成される。したがって1つの体節の前側と後側の境界が2つの脊椎骨の間に相当するので、前側と後側の細胞が入り混じっていると、細胞塊どうしの分離が不完全になり、脊椎骨の癒合が生じると考えられる。脊椎骨の癒合が高頻度に見られる変異マウスおよび変異ゼブラフィッシュを用いて、体節の前後の遺伝子発現の乱れ、つまり前後極性の乱れに着目し、前後極性が乱れた体節から癒合した脊椎骨が分化することを仮説とする。 これまでにNrarp遺伝子のノックアウトマウスを作製し、このマウスの脊椎骨には癒合などの小さな奇形があり、また発生期の体節の前後極性に軽微な異常があることを明らかにしている。妊娠マウスにバルプロ酸を投与すると、胎仔の体節形成異常が起こり、また新生マウスの脊椎骨に癒合などの奇形が生じることがこれまでに知られている。我々はバルプロ酸投与によって生じる体節の異常と脊椎骨の奇形の位置は、バルプロ酸投与の時期に依存することを明らかにした。また異常な体節と脊椎骨の奇形の位置は相関があることを明らかにし、異常な体節から脊椎骨の奇形が生じることが示唆された。さらにバルプロ酸の作用点が体節の原基である未分節中胚葉であり、そこで分節時計を撹乱していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バルプロ酸の作用点を決定できたこと、体節の異常が脊椎骨の奇形の原因であることが示唆できたことなど成果は得られているが、コロナ禍のためにNrarpノックアウトマウスの繁殖が十分にできなかったために、実験に必要なマウスの個体数が集められなかった。そのためにバルプロ酸を用いたNrarpノックアウトマウスの解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Nrarpノックアウトマウスの繁殖をおこなって、実験に必要なNrarpノックアウトマウスの個体数を確保し、バルプロ酸を用いた奇形の誘発実験をおこなって表現型の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大のためにNrarpノックアウトマウスの繁殖が十分にできなかったので実験に必要な数のNrarpノックアウトマウスが得られなかった。そのためにNrarpノックアウトマウスに対するバルプロ酸投与の影響を解析する実験が十分にできなかったので、実験計画が遅れ、次年度使用額が生じた。引き続き計画に沿って実験を進める。
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