研究課題/領域番号 |
19K22435
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤田 秋一 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (60282232)
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研究分担者 |
正谷 達謄 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70614072)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪酸 / 微細構造 / 生体膜 / 電子顕微鏡 / 脂質 |
研究実績の概要 |
申請者らは脂質の超微局在を明らかにすることが、膜脂質の機能を解明するために必須であると考え、そのための方法開発に注力してきた。その結果、急速凍結・凍結割断レプリカ標識法(QF-FRL: Quick Freezing & Freeze-fracture Labeling)によって膜脂質を特異的に標識することが可能であることを示し、生体膜脂質の二次元的分布を定量的に解明することに成功した。このQF-FRL法が識別するのは膜脂質の“親水性頭部”の違いであるのに対し、膜脂質の多様性のもう一つの要因である“疎水性尾部”の違いを明らかにすることは原理的に困難であった。本研究では、現在用いているQF-FRL法をさらに改良することにより、凍結レプリカ脂肪酸標識法を新たに改良し、生体膜における脂肪酸分布をナノレベルで解析することを可能にする。 哺乳類培養細胞あるいは培養組織の培養液中にアルキン化不飽和脂肪酸を入れ細胞内に取り込ませ、そのアナログが本来の内在性脂質と同様の性質を持つことを確認し、そしてクリックケミストリー法により不飽和脂肪酸を標識することができた。標識方法を確立するために、まず蛍光標識法で行い光学顕微鏡を用いて解析し、最適な条件を確定した。具体的には、市販されているアルキン化オレイン酸(1価不飽和脂肪酸)を用いて培養細胞において蛍光標識することに成功した。アルキン化オレイン酸を哺乳類培養細胞に取り込ませた後、アルデヒドで固定しbiotin-azideと反応させることにより、蛍光標識を得ることができた。培養組織における不飽和脂肪酸の標識には、培養細胞と同様の方法を用いたが、外来性に投与した不飽和脂肪酸の浸透性が悪く、明確な不飽和脂肪酸の局在を追えることが出来なかった。さらに令和2年度の4月に電子顕微鏡が故障し、生体膜のレプリカ上での脂肪酸を標識し解析ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共通機器である電子顕微鏡の故障のため,試料の観察およびデータの解析ができず,培養細胞における脂肪酸およびコレステロールを標識して観察が確認できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
故障していた電子顕微鏡が令和3年2月に復旧したので、生体膜のレプリカ上で脂肪酸を標識し、超微形態分布を解析する。今後の研究では、脂肪酸分布解析技術開発のため、脂質の脂肪酸領域を露出することができる凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発・確立する。基本的に従来の急速凍結・凍結割断レプリカ標識(QF-FRL)法を応用し、最初に親水性頭部を露出させ、その後、白金と炭素を蒸着すると疎水性の脂肪酸がむき出しになったレプリカ薄膜が形成される。レプリカ膜上での脂肪酸標識にはアルキン化脂肪酸を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の前半に本研究に必要であった電子顕微級が故障し、計画していた実験の実施に支障が生じ、予算を消化できなかった。現在、電子顕微鏡も復旧し、令和3年度は令和2年度に計画していた実験を行い、本研究の目的である生体膜の脂肪酸のナノスケールでの分布解析を行う予定にしている。
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