「2種類の異なる親細胞に由来する細胞集団で独立に遺伝子操作を行い細胞自律的・非自律的効果を同時に解析する技術」を開発するために、成虫脳ニューロピルグリアを作り出す2つの細胞系譜、「L-EG細胞系譜」と「gcm細胞系譜」それぞれを独立に空間的かつ時間的細胞操作を行う遺伝操作システムを確立することをゴールとした。本年度はdDHFRのDestabilizing Domain (DD)を結合させたfusionタンパク質を用いた薬剤[TMP]による発現誘導系と、GeneSwitch(GS)システムを用いた薬剤[RU486]による発現誘導系により、2つの細胞系譜を独立に操作する系の確立を行ない予定通り、DD/TMPとGS/RU486による発現誘導系により、2つの細胞系譜において独立に遺伝子発現を誘導する系を構築することができたが問題があり成功にはいたらないと判断したため、「gcm細胞系譜」と「gcm細胞系譜以外」という代替プランへの変更を行なった。 全期間を通じて、研究目的達成のために、(1)2つの異なる細胞系譜の前駆細胞を幼虫期に特異的にラベルすることができるエンハンサー配列の同定、(2)幼虫期の限られた時期のみに遺伝子操作をする、薬剤により限定的に遺伝子発現を誘導する系の確立、 (3)2種類のsite-specific recombinase(SSRs)による細胞系譜(子孫細胞)の可視化を中心に開発を行なった。結果としてはそれぞれについて部分的には成功したものの、それぞれにおいて問題を抱えていたため結果として3つの開発事項を組み合わせ2つの細胞系譜を独立に操作するという技術を開発するには至らなかった。一方開発した遺伝子操作技術の一部を組み合わせて、「特定の細胞系譜」において遺伝子操作を行い、操作した細胞系譜とそれ以外を区別して可視化する技術を開発することができた。
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