ヒマは蒸散を迅速かつ厳密にコントロールすることで高温・乾燥地域においても高い生産性を示すと考えられる。ヒマ葉の気孔直下の海綿状組織には、他の植物には見られない特殊な細胞(バルブ細胞)が観察されており、このバルブ細胞の機能解析を進める。 2022年度に精製したバルブ細胞画分からmRNAを抽出し、RNA-Seq解析により発現プロファイルを得た。予備実験の結果と同様に、バルブ細胞画分の発現プロファイルは柔組織細胞の発現プロファイルと近かった。バルブ細胞に特徴的な発現を明らかにするために、バルブ細胞と柔組織細胞の発現プロファイルの比較解析を行った。バルブ細胞画分では、液胞膜局在の各種トランスポーターをコードする遺伝子の発現が上昇している傾向が得られた。バルブ細胞は通常の柔組織細胞と比較してサイズが大きく、細胞サイズを精密にコントロールすることで葉内のバルブとして機能すると予想される。そのため、バルブ細胞では液胞膜局在のトランスポーターの発現量を高めることで液胞サイズを迅速かつ精密にコントロールしている可能性を示唆しているものと考えられる。今後は、バルブ細胞において発現増加が見られたトランスポーターに注目し、液胞サイズ制御との関係を明らかにする予定である。
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