研究課題/領域番号 |
19K22439
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
深田 優子 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 准教授 (40416186)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | プロテオミクス |
研究実績の概要 |
生体蛋白質は時々刻々と多様な分子群と相互作用することにより、成熟、輸送を経て適所に局在化することで、生理機能を発揮する。これらいずれの過程が障害されても蛋白質はその機能を果たせず、時には疾患の要因となる。したがって、生体蛋白質、とりわけ疾患関連蛋白質の相互作用分子を時・空間的解像度を上げて同定することは、極めて重要である。近年のプロテオミクス解析技術は大きく進歩したが、(1)不溶性が高い細胞膜やオルガネラ特異的に起こる蛋白質相互作用、(2)細胞種特異的な蛋白質相互作用や(3)酵素と基質間結合のような一過的な蛋白質相互作用の全容に関しては未だ十分に解明されていない。本研究では、てんかん関連リガンドLGI1とその受容体ADAM22、さらには蛋白質の膜局在に重要な役割を担うパルミトイル化脂質修飾関連酵素をモデル蛋白質として、超解像プロテオミクス法の開発に挑戦する。これまで見過されてきた蛋白質相互作用を明らかにして、シナプス制御機構やシナプス病態機構の理解につながる成果を得る。 2019年度は、タンパク質相互作用を維持した状態で、シナプス不溶性画分からタンパク質複合体を可溶化、精製することが可能な実験条件(界面活性再の種類と濃度)を確立した。そして、脳シナプス膜画分におけるADAM22タンパク質複合体を効率良く、網羅的、特異的に同定することに成功した。また、タグ付きパルミトイル化脂質修飾関連酵素のノックインマウス脳から、多くの相互作用分子を精製、同定した。さらに、神経細胞種特異的なシナプスタンパク質複合体の同定技術の開発に取り組み、実験ツールを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) シナプス不溶性画分からタンパク質複合体を可溶化、精製することが可能な実験条件を確立し、新たなADAM22タンパク質複合体を精製、同定した。 (2) タグ付きパルミトイル化脂質修飾関連酵素のノックインマウス脳から、多くの相互作用分子を精製、同定した。 (3) 神経細胞種特異的なシナプスタンパク質複合体の同定に必要な実験ツールを得た。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 2019年度に同定した新たなADAM22タンパク質複合体の機能解析を進める。 (2) 2019年度に同定したパルミトイル化脂質修飾関連酵素の相互作用分子の機能解析を進める。 (3) 神経細胞種特異的なADAM22やLGI1の相互作用分子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)準備済みのリソースを用いて効率よく実験をおこなえたことにより、予定していた物品費の執行が減少した。 (使用計画)新たに同定した相互作用分子の機能解析に必要となる物品費(神経細胞培養やイメージング等)およびその他(分析室使用料など)として、計画的に執行する。
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