研究実績の概要 |
生体タンパク質、とりわけ疾患関連タンパク質の相互作用分子を時・空間的解像度を上げて同定することは、細胞機能や疾患病態を理解する上で極めて重要である。近年のプロテオミクス解析技術は大きく進歩したが、(1)不溶性が高い細胞膜に起こるタンパク質相互作用、 (2)酵素と基質間結合のような一過的なタンパク質相互作用や(3)細胞種特異的なタンパク質相互作用の全容に関しては未だ十分に解明されていない。本研究では、てんかん関連膜タンパク質ADAM22やパルミトイル化脂質修飾関連酵素をモデルタンパク質として、超解像プロテオミクス法の開発に挑戦する。前年度(2020年度)は、これまで解析が難しかったシナプス不溶性画分から、てんかん関連タンパク質ADAM22を含むタンパク質複合体を精製して、その機能を明らかにした(Fukata et al, PNAS 2021)。次いで2021年度は、ADAM22のリン酸化欠損変異マウス脳を用いた生化学的手法により、ADAM22の分解過程を制御する分子機構を明らかにした(Yokoi et al, Cell Reports 2021)。また、これらの手法を、ADAM22と相互作用するLGIファミリータンパク質に応用し、その相互作用分子を網羅的に同定した(未発表)。また、2020年度に同定した脱パルミトイル化酵素ABHD17に相互作用する新規タンパク質群の解析を進めた。さらに、昨年度に続いて、脳組織と初代培養神経細胞において、神経細胞種特異的なシナプスタンパク質複合体を同定するための実験手法の改良を進めた(未発表)。
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