既知のGタンパク質共役型受容体(GPCR)250種類を1種類ずつHEK293細胞に発現させ、リガンド非依存的に自発的なCa2+振動(オシレーション)を発生させるGPCRの探索を行った。その結果、7種類のGPCRがヒットした。このうち、最も自発活性の高いGPCR (GPR-Xとよぶ)は細胞外にインテグリン結合ドメイン(RGD配列)を有しており、このRGDドメインを変異させることで自発活性が顕著に抑制されることがわかった。しかし、他の自発活性をもつGPCR群にはRGDドメインが保存されておらず、GPCRの自発活性化には全く未知の共通メカニズムが存在する可能性が示された。GPCRとGタンパク質との共役に関わる3アミノ酸を変異させたところ、自発的なCa2+オシレーションが消失した。この結果から、Gタンパク質との共役が自発的なCa2+振動の発生に必須となることが示された。アミノ酸配列情報からヒットGPCRの共通配列が見いだせなかったため、小島涼介先生(京都大学大学院医学研究科)にGPCR一次配列情報比較ディープラーニングを依頼し、自発活性に関与しそうな候補アミノ酸を導出していただいた。候補アミノ酸を一つずつ点変異させたGPCR変異体10種類を作成したが、自発活性と直接結びつく変異体は得られず、複数のアミノ酸によるアロステリックな制御が根底に存在することが示唆された。 次にGPR-X欠損マウスを用いた解析を行った。GPR-X欠損マウスは、野生型マウスと比べてやや体重が軽いものの、行動・運動量、食餌・糞便量等に差はなかった。そこで、3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を曝露し、大腸炎を誘発させたところ、GPR-X欠損マウスにおいて強い炎症抑制作用が観察された。そのメカニズムとして、マクロファージ由来のサイトカイン産生低下が関与していることを見出した。
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