研究課題/領域番号 |
19K22445
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
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研究分担者 |
白鳥 峻志 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋生物環境影響研究センター), 特別研究員(PD) (70800621)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | Candidatus Uab amorphum / 食作用 / Phagocytosis / Planctomycetes / 原核生物 |
研究実績の概要 |
‘‘Candidatus Uab amorphum’(SRT547株)に近縁な培養株3株(SRT713株、SRT719株、SRT722株)についてMinION及びIllumina Hiseqを用いてゲノムシーケンスを取得し、アセンブリを行うことで全ゲノムを解読した。SRT547株を含めた4株での比較ゲノム解析から、これら3株はアミノ酸の生合成系の多くと、プリンピリミジンの生合成系を欠くという、 ‘Ca. Uab amorphum’と同じ特徴が見られた。また、SRT713株はShiratori et al. (2019)で‘Ca. Uab amorphum’の運動性や食作用に関係があるとされたアクチン様遺伝子を欠いていることが明らかとなり、この遺伝子がアメーバに似た運動や食作用に必須ではないことが示唆された。‘Ca. Uab amorphum’の食作用に関連している遺伝子を推定するために、他のPlanctomycetesに属するバクテリアとのゲノム比較を行ったところ、約1000個の遺伝子が ‘Ca. Uab amorphum’及びその近縁株特有であることが示唆された。また、SRT547株とSRT713株への遺伝子導入法の確立のために、GFP蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだベクターを作成した。また、食作用に関連するかもしれない遺伝子の候補の一つであるSRT719株のアクチン様遺伝子に関して、既存のSRT547株のアクチン様遺伝子を含む分子系統解析を行ったところ、両者の起源が異なることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、(実施項目1)SRT713株の全ゲノムの解読、(実施項目2)食作用能に関連している可能性のある遺伝子の選別及び(実施項目3)SRT547株とSRT713株への遺伝子導入法の確立を目標とした。 実施項目1についてはSRT713株に加えて、SRT719株とSRT722株についても全ゲノムの解読を行うことができた。これによってより確度の高い候補遺伝子の選別が可能になると考えられる。これについては、当初の予定よりも格段の進展があったと考える。 実施項目2に関しては、当初の予定通り他のPlanctomycetesに属するバクテリアとの比較ゲノム解析によって、食作用能に関連している可能性のある遺伝子の選別を試みたところ、予想以上に多くの遺伝子が候補として挙げられた。そのため、ゲノム情報に加えてSRT547株の発現プロファイルを用いて候補遺伝子を絞り込む必要があると判断し、現在SRT547株のトランスクリプトーム解析に向けて準備を進めている。 実施項目3に関しては、SRT547株とSRT713株への遺伝子導入で使用する、GFP蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだベクターを作成したが、当初予定していた遺伝子導入法の確立までには至らなかった。 さらに、食作用関連候補遺伝子の分子系統解析による進化的由来の推定にも、アクチン様遺伝子のみではあるが着手することができ、この点では予定よりも進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はまず、SRT547株の各増殖ステージにおけるトランスクリプトームを取得し、その発現プロファイルと比較ゲノム解析の結果から、食作用能に関連している可能性のある遺伝子の選別を試みる。それと並行して、SRT547株とSRT713株への遺伝子導入法の確立を行う。 選別された候補遺伝子から5遺伝子ほどを選抜し、確立された遺伝子導入法を用いてそれらの遺伝子がコードするタンパク質とGFPの融合タンパク質の細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡及び抗GFP抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察によって確認する。さらに、選抜した候補遺伝子のノックアウトも試み、それらの機能も明らかにする。 また、発現プロファイルと比較ゲノムから推定された候補遺伝子について、分子系統解析による進化的由来の推定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
'Candidatus Uab amorphum' のRNA-seqを外注したが、 品質チェックをパスできなかったため、年度内の納品が不可能となった。これについては、次年度使用額を用いてライブラリの作成を行い、再度 RNA-seqをやり直す予定である。
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