研究実績の概要 |
前年度に続き、Candidatus Uab amorphum’(SRT547株)および同じUab系統の近縁捕食性培養株3株(SRT713株、SRT719株、SRT722株)のゲノム解析を詳細に行なった。ゲノムには、5,167から7,729のタンパク質コード遺伝子の存在が予測された。捕食関連タンパク質を推定するために、非捕食性のプランクトミケス門細菌種2株とのオルソログ解析を行った結果、7,001オルソログクラスターが得られ、そのうち1,245クラスター(18%)が捕食性種特異的であった。この結果は捕食性種の遺伝子組成の高い独自性を示している。捕食性種特異的タンパク質の機能予測を行なったところ、細胞膜関連タンパク質や、転移酵素活性、加水分解酵素活性、タンパク質分解酵素活性をもつタンパク質が多いことがわかった。これらは食胞形成や消化に関連していると推測される。 環境配列の解析から、Uab系統にはこれまでに培養株として報告のない多数の新規系統が存在しており、それらの中には淡水や土壌など環境に特異的に存在する系統も含まれることが示唆された。Uab系統内での捕食能の進化を解明するため、Uab系統の様々な系統の培養株間で比較することが望ましい。そこでまず環境中から効率よくUab系統細菌を検出する方法を確立し、実体の可視化を試みた。環境配列情報をもとに系統特異的プライマーを作成し、PCRを行うことで、筑波大学構内の川から淡水Uab系統の配列を特異的に検出できた。検出した配列に特異的なプローブを用いて蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)を行い、淡水Uab系統を初めて可視化することに成功した。この生物は原核生物としては大型で捕食能を持つ可能性がり、SRT547株とは16S rRNA遺伝子配列で約11%の差異がある別系統に属していることから、Uab系統内に食作用様の捕食が広く分布することが示唆される。
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