研究課題/領域番号 |
19K22446
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40250104)
|
研究分担者 |
森 稔幸 順天堂大学, 医学部, 助教 (00462739)
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
三角 修己 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90583625)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | 雌雄性の起源 / 性決定遺伝子 / 配偶子融合因子 / GCS1/HAP2 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
1. 緑藻ボルボックス系列:従来ヘテロタリックで雌雄の性表現しかないとされていたプレオドリナの1種(Nozaki et al. 2006)のフィールドサンプルから1個のクローン株で接合子を形成するホモタリック表現型を明らかにした(Takahashi et. al. 2019, 5th International Volvox Coference)。従って、本種は3個の性表現型を持つ極めて興味深い種であることが明らかになった。 2. マラリア原虫:ネズミマラリア原虫を材料とし、そのメス配偶子で発現していると予想される新規受精因子(GCS1パートナー分子を含む)の探索を試みた。ネズミマラリア原虫で唯一同定されているメス側受精因子P47にRFPを融合させたP47-mRuby2を発現する株を作製し、免疫沈降法でP47の近傍にある受精因子のスクリーニングを行った。その結果、メス特異的に発現するタンパク質候補のリストを得た。 3. 接合藻ヒメミカヅキモ:陸上植物系統のヒメミカヅキモにおける性決定遺伝子CpMinus1について、合成ペプチドを用いて特異抗体を作製した。得られた抗体は、大腸菌で産生させた組換え型タンパク質については特異的な反応を示すものの、ヒメミカヅキモ由来の内在性CpMinus1タンパク質の検出は出来なかった。さらに2カ所の異なる配列部位を用いて調製した抗体についても同様の結果であった。 4. 原始紅藻類シゾンでこれまでに知られていなかった倍数化による核相の変化と細胞壁を持つ形態の細胞が出現した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4個の異なる系統においてそれぞれ性に関する新知見が明らかになったから。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 緑藻ボルボックス系列:3個の性表現と MID, GCS1の存在と発現を解析し、雌雄性とこれら遺伝子の関連を明らかにする。 2. マラリア原虫:マラリア原虫は、1種類の塩基配列ゲノムからオスメス2種類の性を産出できるため、性決定機構はエピジェネティック制御によるものと予想される。今後はマラリア原虫エピゲノム解析法を研究・習得し、エピジェネティック制御下にある遺伝子から、GCS1パートナー分子をはじめとした性特異的受精因子の探索を計画する。 3. 接合藻ヒメミカヅキモ:タグ配列をつけた組換え型CpMinus1遺伝子をヒメミカヅキモ自身で産生させることで、ChIP-seqを行う。形質転換ヒメミカヅキモの産生と組換え型タンパク質の発現確認を進める。 4. シゾンの核相の変化は有性生殖の可能性を示唆し、今後の詳細な研究が期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年3月に現地調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大防止のために実施することを見合わせた。その結果使用しなかった旅費と物品費を次年度使用額とした。
|