研究課題
ボルボックス(Volvox)の雌雄異体種(メスとオスが異なる種)とこれに極めて近縁な雌雄同体種の全ゲノム比較解析から、雌雄同体種は、雌雄異体種のメス側の性染色体の性決定領域(SDR)が残存したままオス特異的遺伝子を獲得することで誕生したことが明らかになった。雌雄異体種と雌雄同体種との転換進化はさまざまな生物で研究されているが、雌雄同体種への転換時におけるメスとオスの性染色体のSDRの運命を初めて明らかにした。雌雄同体種へ進化した後もメス側の性SDRだけがほぼ残存している驚くべき事実はメス機能とオス機能の発現の差異を反映している可能性があり、性の進化の新たなる研究が期待される (Yamamoto et al. 2021, PNAS)。長期間にわたる相模川水系の相模湖・津久井湖のフィールド調査と培養・交配実験から緑藻プレオドリナ(Pleodorina)の同一種がメスとオスに加えて両性型の3番目の性表現型を持つことを明らかにした。メス、オス、両性型の3個の性表現が同一種に存在することは、シンプルな性決定システムをもつとされてきた藻類・菌類における初めての発見である。メスとオスが分かれている種から両性型の種への進化の初期段階とも考えられ、交配実験から示唆された両性型決定因子の解明に大きな期待が持たれる (Takahashi et al. 2021, Evolution)。また、本種の3個の性表現型の性誘導による発現解析の結果、両性型の株ではMIDとGCS1の発現増大がオス配偶子を誘導し、発現抑制がメス配偶子を誘導することが推測された。これは両遺伝子がメスとオスを具現する真核生物に共通する特性が両性型の生物でも認められたことになる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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